
なぜ?ニッポン
日本の「当たり前」に「なぜ?」を投げ、俗説と確かな話を分けてほどく、J-Times の日本語ポッドキャスト。「それ、本当?」と聞く役と、出典で答える案内役の10分前後の会話です。声は AI で作っています。内容は J-Times 編集部が資料で確かめたものです。
エピソード (6)

日本人の長寿は「医療でも遺伝でもない、和食の秘密」? 確かめ直すと、研究がまず挙げるのは国民皆保険と地域の公衆衛生、そして減塩でした。1960年代の日本は主要7か国で平均寿命が最も短かったこと、腹八分目・入浴・生きがいの研究が言えることと言えないこと、健康寿命との差まで、ケンゾーとケンがほどきます。
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「水道水を飲めるのは世界で15カ国だけ」は本当? 確かな出典は見つかりませんでした。国交省の9カ国の図、WHO/UNICEF の31カ国、52項目の水質基準と PFAS、高度浄水処理、夜に漏水の音を聴く人、老朽化の課題、旅行や災害のときの注意まで。J-Times が自分の記事を直した点も含めて、ケンゾーとケンがほどきます。
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「日出ずる国」は、世界で最初に朝が来るから? いいえ、中国から見て東にある国、という意味でした。607年の「日出づる処の天子」の国書で煬帝が怒った本当の理由、倭から日本へ、ニッポンとニホンどちらが正しいか(2009年の政府答弁書)、日の丸が国旗になった年まで、ケンゾーとケンがほどきます。
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クリスマスにケンタッキーを食べるのは「外国人が七面鳥と間違えたから」? そんな記録はありません。1974年のキャンペーン、本人も語る3つの「始まりの話」、記録でわかる売上、キリスト教徒が約1%の国で定着した理由まで、逸話と記録を分けてケンゾーとケンがほどきます。
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日本では4が不吉なのはなぜ? 理由は「音」。では今どこで避けられている? 4階はあるのに404号室がない病院、お祝いの贈り物の数、香港の建築ルール、そして「4日に亡くなる人が増える」という論文と、その再分析まで。俗説と確かな話を分けて、ケンゾーとケンがほどきます。
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日本人がマスクをするのは「顔を隠したいから」? それも一つの理由。でも、100年前のスペインかぜのポスター、4割を超える花粉症、周りの人を守るという国の考え方まで、理由は重なっていました。調査の対象と時点も添えて、ケンゾーとケンがほどきます。
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番組の会話をそのまま文字にしたものです。声は AI で作っています。
第6回 日本人はなぜ長生き? — 「和食の秘密」より先にあった、3つの理由
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本人が長生きなのは、和食のおかげ。医療でも遺伝でもない、食の秘密がある。そんな記事を、よく見かけます。本当ですか?
ケンゾー:正直に言うと、J-Times も、昔、まさにそういう題名の記事を出していました。医療でも遺伝でもなかった、と。でも、研究を確かめ直したら、むしろ逆だったんです。
ケン:逆?
ケンゾー:今日は、直したところも含めて、ほどいていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、国の統計や、医学の論文で確かめたものです。健康についての個別の判断は、お医者さんに相談してくださいね。
ケンゾー:第6回の問いは、これです。日本人は、なぜ長生きなのか。まず数字から。2025年の平均寿命は、男性が81.35年、女性が87.33年。女性は、厚生労働省が比べた国の中で、いちばん長く、男性は7番目でした。
ケン:男性は、世界一じゃないんですね。
ケンゾー:何を比べるかで、変わります。国ではない香港は、男女とも日本より長い。WHOの男女合わせた推計では、日本は185か国の中で、いちばん長い。ひとことで世界一、とは言いにくいんです。
ケン:では、本題。なぜ長いんですか?
ケンゾー:ヒントは、戦後の伸びです。1947年の平均寿命は、男性が50年ほど、女性が54年ほど。そこから、およそ80年で、30年以上、延びました。この間に、日本人の遺伝子が変わったわけでは、ありませんよね。
ケン:たしかに。80年で、遺伝子は変わらない。
ケンゾー:医学誌ランセットの日本特集は、その理由を、こう説明しています。ひとつ。戦後すぐ、結核などの感染症で亡くなる人が、急速に減った。ふたつ。1960年代からは、脳卒中で亡くなる人が、大きく減った。高血圧の対策など、地域の予防の活動と、1961年に始まった国民皆保険で、医療を誰もが使えるようになったことが、寄与した。
ケンゾー:みっつ。教育の機会と、お金の心配なく医療にかかれることが、健康の格差を、小さくした。
ケン:だから、医療でもなかった、は逆だった。
ケンゾー:そうなんです。誰もが医療を使える仕組みと、地域の公衆衛生こそが、まず挙げられる理由でした。その裏には、戦後、感染症と闘ったお医者さんや保健師さん、減塩を呼びかけ続けた、地域の人たちがいます。
ケン:じゃあ、和食は関係ないんですか?
ケンゾー:関係は、ありそうです。国立がん研究センターの研究者の総説は、心臓の病気やがんで亡くなる人が少ない理由として、肥満が少ないこと、赤い肉が少なく魚が多いこと、大豆製品や緑茶などを挙げています。
ケンゾー:ただ、ここに意外な話があります。1960年代の日本は、主要な7か国の中で、平均寿命が、いちばん短かったんです。
ケン:いちばん、短かった?
ケンゾー:昔の日本の食事は、塩が多くて、脳卒中と胃がんで亡くなる人が多かった。そこから、塩を減らして、肉や牛乳も少しとるようになって、血圧が下がったとみられています。つまり、昔ながらの和食が、そのまま長寿をつくったわけでは、ないんです。
ケン:和食なら、何でもいい、ではない。
ケンゾー:そして、塩は今も課題です。2024年の国の調査で、大人の食塩の平均は、1日9.6グラム。国の目標の7グラムには、まだ届いていません。味噌汁や漬物は、発酵食品ですが、塩も多い食べ物です。
ケン:腹八分目は? 長生きの秘訣、と聞きますけど。
ケンゾー:人では、寿命まで確かめた研究は、まだありません。食べ過ぎて太らないための知恵としては、今も意味があります。でも、科学的に証明された長寿の魔法、と言うのは、言い過ぎでした。
ケン:お風呂は? 日本人は、毎日、湯船につかりますよね。
ケンゾー:関連は、見つかっています。中高年の、およそ3万人を、20年近く追った日本の研究では、ほぼ毎日湯船に入る人は、週2回以下の人より、心臓の病気と脳卒中を合わせた発症のリスクが、28パーセント低かった。
ケンゾー:ただし、これは、関連です。湯船に入れる、暮らしの余裕のような、ほかの要因が影響している可能性もあります。そして、お風呂には、危険もあります。お年寄りの浴槽での事故は、冬に多い。目安は、お湯は41度以下、つかるのは10分まで、です。
ケン:生きがい、という言葉も、海外で人気ですよね。
ケンゾー:東北大学が、宮城県大崎市の、4万人あまりを、7年ほど追った研究があります。生きがいがない、と答えた人は、ある、と答えた人より、亡くなるリスクが、およそ1.5倍高かった。生きがいの形は、人それぞれです。仕事でも、趣味でも、誰かに頼られる、小さな役割でも。
ケン:ケンゾーさん。最初、わたし、和食の秘密、みたいな、ひとつの答えを期待していました。でも、ほどいてみたら、みんなが医療を使える仕組みと、塩を減らしてきた、地域の地道な努力だった。
ケンゾー:そうなんです。長生きは、一人の努力だけで生まれたものじゃない。そして、もうひとつ大事なことがあります。元気に暮らせる期間、健康寿命は、平均寿命より、男性で8年あまり、女性で11年あまり、短いんです。
ケン:長く、より、元気に長く。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日本の長寿は、和食の魔法じゃない。誰もが医療にかかれる仕組みと、減塩の、積み重ね。
ケン:わたしは、明日から、麺のつゆを、飲み干さないようにします。
ケンゾー:いい一歩ですね。数字の表、研究ごとの注意、今日からできるチェックリスト、記事で直した点は、J-Times の記事、日本人はなぜ長生きなのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
第5回 なぜ日本の水道水は飲めるの? — 「世界で15カ国だけ」は本当か
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本は、水道水をそのまま飲める、世界で15カ国だけの国。よく聞く話ですけど、それ、本当ですか?
ケンゾー:鋭いですね。じつは、J-Times も、昔の記事でその数字を使っていました。でも、確かめ直したら、確かな出典が、見つからなかったんです。
ケン:自分たちの記事を、直したんですか。
ケンゾー:はい。今日は、直したところも含めて、ほどいていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、国や東京都、国際機関の資料で確かめたものです。
ケンゾー:第5回の問いは、これです。なぜ日本の水道水は、そのまま飲めるのか。答えを先に言うと、法律で決まった水質の基準と、毎日の検査、そして、それを支える人の仕事があるから。2026年の4月からは、基準は52項目です。
ケン:で、15カ国だけ、は?
ケンゾー:近い数字は、ありました。国土交通省の資料に、水道水をそのまま飲める国を、日本を含む9カ国、注意すれば飲める国を33カ国、とする図があります。ただ、これは、外務省の旅行者向けの情報と、旅行ガイドブックのウェブサイトをもとに作られた、目安なんです。各国の水を測って比べたものでは、ありません。
ケン:じゃあ、国際的に比べるときは?
ケンゾー:WHOとUNICEFの統計が使われます。2024年に、安全に管理された飲み水を、ほぼ全員が使える国は、31カ国でした。一方で、世界では、およそ4人に1人が、まだ、安全に管理された飲み水を使えていません。
ケン:15でも、9でも、31でもなく。でも、少数派なのは、確かなんですね。
ケンゾー:そこが、確かめて言えることです。数字は違っても、蛇口の水を安心して飲める国が、世界で少数派なのは、確かです。
ケン:では、日本の水は、どうやって守られているんですか?
ケンゾー:まず、法律です。水道を届ける事業者には、水道法の基準に合う水を届けることと、定期的な検査が、義務づけられています。蛇口の水には、消毒のための塩素を、1リットルあたり0.1ミリグラム以上、残しておくことも、決まっています。
ケン:あの、カルキのにおい。あれは、大丈夫なんですか?
ケンゾー:においは、消毒が効いている、しるしでもあります。東京都は、においを抑えるために、国の目標より厳しい、独自の目標も置いています。
ケンゾー:それから、2026年の4月には、有機フッ素化合物、いわゆるPFASのうち、2つが、正式な水質基準に加わりました。水道の事業者には、検査と、基準を守る義務がかかります。自分の地域の結果は、事業者の公表資料で確かめられます。
ケン:浄水場では、何を?
ケンゾー:基本は、川や湖の水の濁りを、薬品で固めて沈めて、砂でこして、塩素で消毒する。東京23区では、利根川と荒川の水系の浄水場で、オゾンと活性炭を組み合わせた、高度浄水処理を加えています。カビのようなにおいの元まで、取り除くためです。
ケンゾー:ここも、昔の記事を直したところです。前は、東京の全部の浄水場で、と書いていました。でも、多摩川の水系には、入っていないところもある。正しくは、23区の浄水能力の、およそ8割を占める浄水場、です。
ケン:細かいけど、大事な違いですね。
ケンゾー:そして、人の仕事。東京都水道局は、地下で水が漏れる音を聴き分ける調査を、車の少ない夜にも行っています。東京の漏水率は、1992年度の10.2パーセントから下がって、2023年度は3.9パーセントでした。
ケン:夜の道路で、水の音を聴いている人がいる。
ケンゾー:一方で、課題もあります。法律で決まった使用年数の40年を超えた水道管は、全国で、2022年度に23.6パーセント。上がり続けています。この当たり前を、次の世代に渡すには、更新のお金と、担い手が必要なんです。
ケン:それなのに、ペットボトルの水を買う人も、多いですよね。
ケンゾー:内閣府の2024年の調査では、水道水を、そのまま飲んでいる人は、39.1パーセント。ミネラルウォーターなどを買っている人が、36.1パーセント。浄水器を付けている人が、34.3パーセントでした。安全かどうかと、味や好みに合うかどうかは、別の問題なんですよね。
ケン:旅行で来る友だちには、何と伝えればいいですか?
ケンゾー:ホテルや駅、公共施設の蛇口の水は、基本的に、そのまま飲めます。ただ、飲用不可、と書かれた蛇口は、飲まない。山の湧き水も、水道の基準で検査された水とは、限りません。
ケンゾー:住んでいる人は、マンションで、いったん受水槽に水をためる建物なら、受水槽から蛇口までは、建物の側が管理します。色や、においが、いつもと違ったら、飲まずに、管理会社か水道の事業者へ。そして、災害に備えて、飲み水は、1人1日3リットル、最低3日分です。
ケン:ケンゾーさん。最初、わたし、15カ国だけの奇跡の水、と思っていました。でも、ほどいてみたら、奇跡じゃなくて、法律と、検査と、夜に音を聴く人の、積み重ねだった。
ケンゾー:そうなんです。だから、J-Times は、奇跡、とは書かないことにしました。毎日働いている人がいるから、成り立っている当たり前、なんですよね。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日本の水道水が飲めるのは、奇跡じゃない。夜の道路で、水の音を聴いている人がいるから。
ケン:明日の朝、蛇口の水を一杯飲むとき、思い出しそうです。
ケンゾー:国際比較の数字、浄水のしくみ、記事で直した点の一覧と出典は、J-Times の記事、日本の水道水はそのまま飲めるのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
第4回 なぜ「日出ずる国」? — 国号「日本」の由来と、ニッポンとニホン
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本が、日出ずる国、と呼ばれるのは、世界でいちばん最初に、朝日が昇る国だから、でしょう?
ケンゾー:堂々とした響きですよね。でも、違うんです。じつは、もっと地図の上の話。そして、1400年前の、ある手紙から始まります。
ケン:手紙?
ケンゾー:今日は、それを、ほどいていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、中国と日本の古い歴史書や、政府の答弁書、法律で確かめたものです。
ケンゾー:第4回の問いは、これです。なぜ日本は、日出ずる国、と呼ばれるのか。答えを先に言うと、日本という国の名前が、日の本、つまり、中国から見て、日の昇る東の国、という意味だから。8世紀の初めに、倭に代わって定着しました。
ケン:中国から見て? 自分で名乗ったのに?
ケンゾー:そうなんです。いちばんはっきり書いているのは、中国の歴史書、新唐書です。日本の使いが、国が、日の出るところに近いので、それを名とした、と説明した、とあります。旧唐書にも、ほぼ同じ説明があります。
ケンゾー:つまり、日出ずる、は、地理と、見る場所の話。わたしたちは、中国の東にある国だ。それを、堂々と聞こえる言葉で言い表したのが、日本、だったんです。
ケン:で、1400年前の手紙というのは?
ケンゾー:607年。倭の王が、中国の隋の皇帝、煬帝に送った国書です。隋の歴史書、隋書によると、こう始まっていました。日出づる処の天子、書を、日没する処の天子に致す。恙無きや。
ケン:有名な一文ですね。
ケンゾー:煬帝は、これを読んで、喜ばなかった。外交の担当者に、無礼な手紙は、二度と取り次ぐな、と言ったそうです。
ケン:日が沈む、と書かれたから、怒ったんですか?
ケンゾー:そう思われがちですが、違います。怒ったのは、太陽のたとえではなく、対等な書きかた、なんです。中国の考えかたでは、天子は、世界に一人しかいない。その称号を、両方の王に使ってしまった。山川出版社の辞典も、対等な関係を前提にした形だったので、煬帝は、礼に反するとした、と説明しています。
ケン:なるほど。太陽じゃなくて、天子が、ふたり。
ケンゾー:日本の歴史書、日本書紀は、607年に小野妹子を送ったことを記しています。ただ、この手紙そのものは、載せていません。かわりに、翌年の手紙が載っていて、そこには、東の天皇、敬みて、西の皇帝に白す、とあります。言い回しは穏やかですが、やはり、並び立つ立場を示しています。
ケン:その手紙を書いたのは、聖徳太子ですか?
ケンゾー:多くの概説は、聖徳太子の外交として説明しています。ただ、隋書が、差出人として書いているのは、多利思比孤、という名前だけで、それが誰かは、説が分かれます。なので、番組でも、断定はしません。
ケン:じゃあ、倭、という呼び名から、日本に変わったのは、いつですか?
ケンゾー:いちばん確かな記録は、続日本紀です。704年の記事に、唐から帰った、粟田真人の報告が載っています。唐に着いて、どこの使いか、と聞かれ、日本国の使いだ、と答えた。8世紀の初めには、日本という名前が、国際的に認められていた、ということです。
ケンゾー:ただ、国の中でいつ使い始めたかは、まだ議論があります。中国の歴史書どうしでも、細かいところは食い違っている。旧唐書は、国の名前の由来を、3つの説で並べたうえで、日本から来る使いは、自分を大きく言いがちで、事実で答えない、だから中国はこれを疑う、とまで書いているんです。
ケン:1000年以上前から、お互いに、疑い合っていたんですね。
ケン:ところで、ニッポンと、ニホン。正しいのは、どっちですか?
ケンゾー:どちらも、正しいんです。2009年6月30日の、政府の答弁書は、にっぽん、にほん、は、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はない、としています。
ケン:でも、昔、政府がニッポンに決めた、と聞いたことがあります。
ケンゾー:1970年に、閣議でニッポンに統一した、という話ですね。それは、同じ答弁書で、政府自身が、そのような閣議決定は行っていない、と否定しています。1934年に、国の調査会がニッポンとする決議をしたのは本当ですが、政府には採用されず、正式な決定はありません。
ケン:それ、本当? の答えが、政府の答弁書にあったとは。
ケンゾー:ちなみに、日の丸も、太陽をかたどったものです。1854年に、日本の船の印として採用されて、1870年の規則で寸法が決まりました。法律で国旗と定められたのは、ずっとあとの、1999年です。
ケン:1999年。思ったより、最近ですね。
ケンゾー:当時の総理大臣の談話は、日の丸と君が代は、すでに慣習として定着していたとし、法律にしたことは、国民に新たに義務を課すものではありません、と述べています。
ケン:ケンゾーさん。最初、わたし、世界でいちばん最初に朝が来る国、だと思っていました。でも、ほどいてみたら、隣の大国の東にある国、という、地図の上の名前だった。そして、その名前で、対等に話そうとした、1400年前の手紙があった。
ケンゾー:いい気づきですね。日出ずる国、は、自慢ではなく、隣の国との関係の中で、自分を言い表した名前、なんですよね。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日出ずる国、は、世界で最初に朝が来る、という意味じゃない。中国から見て、東にある国、という意味。そして、ニッポンも、ニホンも、どちらも正しい。
ケン:ニッポンか、ニホンか、で迷ったら、答弁書の話をします。
ケンゾー:歴史書ごとの比べ表、年表、答弁書と法律の出典は、J-Times の記事、なぜ日本は日出ずる国と呼ばれるのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
第3回 なぜクリスマスにケンタッキー? — 3つの「始まりの話」と、記録でわかること
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本人がクリスマスにケンタッキーを食べるのは、昔、外国の人がフライドチキンを七面鳥と間違えたから。そう聞いたんですけど。
ケンゾー:よく広まっている話ですね。でも、そういう記録は、ないんです。しかも、始まりの話は、少なくとも3つあって、互いに食い違っている。
ケン:3つも?
ケンゾー:今日は、それを、ほどいていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、会社の記録や報道、国の統計で確かめたものです。
ケンゾー:第3回の問いは、これです。なぜ日本人は、クリスマスにケンタッキーを食べるのか。答えを先に言うと、日本KFCが、1974年の12月に始めた、クリスマスのキャンペーンが、定着したから。
ケン:1974年? もっと昔からの風習かと思っていました。
ケンゾー:まだ50年ほどの歴史です。会社の沿革によると、1970年3月、大阪の万博に、アメリカのKFCが実験のお店を出しました。同じ年に会社ができて、11月に、名古屋で1号店が開店。テレビのCMは1973年に始まり、その翌年の12月に、初めてのクリスマスキャンペーン、という一行があります。
ケンゾー:合言葉は、クリスマスには、ケンタッキー。ただ、このコピーの言葉は、会社の沿革ではなく、報道で確かめたものです。
ケン:で、その3つの、始まりの話は?
ケンゾー:中心にいるのは、大河原毅さん。初期の店長で、のちに社長になった人です。ひとつめの話は、七面鳥を恋しがる外国人のお客さん。お店で、日本ではクリスマスに七面鳥が手に入らない、と話しているのを聞いて、クリスマス用のバーレルを思いついた。これは、会社の広報が、イギリスのBBCに語った話です。
ケン:間違えた、じゃなくて、手に入らないから、代わりに。
ケンゾー:そこが大事なところです。どの話でも、外国のお客さんは、フライドチキンだと、ちゃんと分かっていた。間違えた、という話は、伝わるうちに崩れた形なんです。
ケンゾー:ふたつめは、大河原さん本人が、2018年のポッドキャストで語った話。お店の近くの幼稚園から、クリスマス会でフライドチキンを食べたいので、サンタ役をしてほしい、と頼まれた。サンタの格好でバーレルを抱えて、教室を踊って回ったら、大成功だった。
ケン:店長さんが、サンタに。いい話ですね。
ケンゾー:そして、みっつめ。同じポッドキャストで、大河原さんは、NHKの取材で、フライドチキンは西洋のクリスマスの習慣なのか、と聞かれて、七面鳥を食べると知りながら、はい、と答えた、と語っています。嘘をついた、今も後悔している、と。
ケン:ご本人が、それを言ったんですか。
ケンゾー:ええ。ただ、どの話も、何十年もあとの証言で、逸話です。どれが正しいかは、記事でも、番組でも、決められません。会社の、創業の言い伝え、として読むのが妥当でしょう。
ケン:じゃあ、アメリカでも、クリスマスにはフライドチキン、というのは?
ケンゾー:一般的な習慣では、ありません。さっきの、はい、と答えた話のとおりです。
ケン:では、記録で、確かめられることは?
ケンゾー:多くはないけれど、確かです。1974年12月の、初めてのキャンペーン。1985年の、パーティバーレルの発売。そして、会社が年末に出した、売上の発表。クリスマスの時期の、お店の売上は、2022年が、3日間で64億円。2023年が、3日間で70億円。どちらも速報値です。
ケン:3日間で、70億円。
ケンゾー:一方で、よく引用される、何百万世帯が食べている、といった数字は、会社の公表資料までたどれなかったので、番組では言いません。
ケン:それにしても、キリスト教徒の少ない国で、なぜ、ここまで定着したんでしょう。
ケンゾー:まず事実から。国の宗教の統計では、キリスト教系の信者は、およそ125万人。総人口の、およそ1パーセントです。そして、12月25日は、国民の祝日ではありません。受け継がれてきたクリスマスの献立が、もともと、なかったんです。
ケンゾー:ここからは解釈です。このキャンペーンを研究したフランスの経営大学院の先生は、BBCに、空白を埋めたのです、と語っています。祝日でない日に、七面鳥を一日がかりで料理するのは、現実的じゃない。買ってくるだけで済むバーレルは、家族のクリスマスに、よく合った。
ケン:空白を、埋めた。
ケンゾー:BBCが取材した、東京のお父さんの言葉が、今の姿をよく表しています。チキンが目的じゃない。家族が集まることが目的で、そこにたまたまチキンがあるんです。
ケン:いい言葉ですね。
ケン:今年食べたい人は、予約したほうがいいですか?
ケンゾー:予約しておくのが確実です。2024年は、11月1日にネットの予約が始まって、受け取りは、12月20日から25日でした。2025年には、混む24日と25日のピークを避けた、予約の仕組みも加わっています。2026年の日程は、記事を確かめた時点では、まだ発表されていなかったので、会社の公式の案内で確かめてください。
ケン:ケンゾーさん。わたし、最初、外国の人が間違えた、という面白い話で、終わらせようとしていました。でも、ほどいてみたら、話は3つあって、どれも逸話。確かなのは、キャンペーンと、家族が集まる日になった、ということ。
ケンゾー:そうなんです。面白い起源の話ほど、広まるうちに形が変わる。だからこそ、記録と、逸話を、分けて楽しむのがいいんですよね。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日本のクリスマスのケンタッキーは、まだ50年。そして、始まりの話は、本人も含めて、3つある。
ケン:今年のクリスマス、家族に話してみます。チキンを、囲みながら。
ケンゾー:年表、3つの話の出典、売上の発表は、J-Times の記事、なぜ日本人はクリスマスにケンタッキーを食べるのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
第2回 なぜ日本では「4」が不吉なの? — 病院の部屋番号と、4の日の俗説
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本のマンションや病院には、4階がない。そう聞いたことがあるんですけど、本当ですか?
ケンゾー:いい入口ですね。答えを言うと、4階のある病院は、ふつうにあります。でも、ある数字が、そっと抜けている。そこに、面白い話があるんです。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、辞典や病院、百貨店の公開している情報、論文で確かめたものです。
ケンゾー:第2回の問いは、これです。なぜ日本では、4が不吉なのか。理由は、ひとことで済みます。4を音読みすると、し。死ぬ、の、死と、同じ音だから。9も、く、と読むと、苦しい、の、苦に通じるので、同じ扱いです。
ケン:それだけ? 形とか、意味とかじゃなくて?
ケンゾー:音、なんです。小学館の百科事典は、数の縁起の多くは、ことばの音が不吉なことに通じるのを理由に言われている、と書いています。こういう数を、忌み数、と呼びます。
ケンゾー:組み合わせにも広がります。4と9を、し、く、と読んで、死苦。42を、し、に、と読んで、死に。昔は、4の日に旅立ちや引っ越しをしてはいけない、という言い伝えもありました。
ケン:でも、ふだん、わたしたちは4を、よん、と言いますよね。あれは、死を避けるため?
ケンゾー:よく、そう聞きますよね。でも、J-Times が確かめた辞典や大学の資料は、それが理由だとは、書いていないんです。ある大学の先生は、し、は聞き取りにくいからか、よん、と読むことが少なくない、と書いています。なので、番組でも、死を避けるため、とは言いません。
ケン:聞き取りやすさ、という理由もありうる。言い切らないんですね。
ケンゾー:では、今、どこで4は避けられているのか。いちばん確かな手がかりは、病院です。茨城県日立市の、ひたち医療センターは、病室の番号を、ホームページに載せています。
ケンゾー:まず、4階は、あります。そのうえで、4階の病室は、401、402、403、そして405。404がないんです。409も、ありません。
ケン:4階はあるのに、末尾の4と9が、抜けている。
ケンゾー:病院は、理由を書いていません。でも、4と9を避ける慣習と、ぴったり重なる並びかたです。ただ、どこの病院もそうではありません。看護師向けのサイトのアンケートでは、縁起が悪いとされる番号が、勤務先にある、と答えた人が65パーセントでした。
ケン:じゃあ、4階がない、という話は?
ケンゾー:4階は、ふつうに、あるんです。欠けているのは、部屋の番号のほう。この形が、実態に近いと考えられます。ちなみに、マンションの欠番がどのくらい広がっているかは、公的な資料が見つからなかったので、番組では話しません。
ケン:ほかに、4を避ける場面は?
ケンゾー:いちばん身近なのが、お祝いの贈り物です。大丸松坂屋のガイドは、4と9を、お祝いでは避ける数とし、3、5、7を、縁起のいい数としています。2個1組のペアや、1ダースは、ひと組と数えるので、お祝いにも向く、と。
ケンゾー:そして同じガイドは、マナーから外れることを、極端に恐れる必要はありません、とも書いています。知っておけば十分、という温度感ですね。
ケン:少し、ほっとしました。
ケン:4を避けるのは、日本だけですか?
ケンゾー:東アジアに共通しています。中国語の広東語と北京語でも、4と死の音が、同じか、似ている。韓国語では、どちらも、サ、と発音します。
ケンゾー:いちばん公的な根拠がはっきりしているのが、香港です。香港政府の建築の役所は、階の番号は、原則として続けてつけるよう求めています。番号が飛ぶと、火事や救急のときに、混乱するから。ただし、4と13、末尾が4の階は、長年の地元の慣習を踏まえて、欠番を認めているんです。
ケン:政府が、認めている。3階の次が、5階。
ケンゾー:そうなんです。一方、西洋の13は、仕組みが違います。百科事典によれば、キリストの最後の晩餐の席にいたのが、13人だったことによる、とされます。語呂合わせではありません。
ケン:ケンゾーさん、もうひとつ。4日には、亡くなる人が増える、という話を聞いたことがあります。これは?
ケンゾー:これこそ、それ、本当? の出番です。2001年に、イギリスの医学雑誌に、ある論文が載りました。アメリカに住む中国系と日系の人では、心臓の病気で亡くなる人が、毎月4日に、予測の1.13倍に増えていた、という内容です。
ケン:本当に、増えていたんですか。
ケンゾー:ところが、翌年、同じ雑誌に、再分析が載ります。別の年のデータでは、4日の山は、確認できなかった。どの死因を集計に入れたかという、選びかたにも、疑問が示されました。
ケンゾー:つまり、ある期間の、ある分けかたのデータにだけ、現れた結果だった。4を嫌う風習があるのは、確かです。でも、その風習が人の死を増やす、という話は、証明されたとは言えません。今は、確かめられていない、と扱うのが妥当です。
ケン:面白い。風習は本当。でも、そこから広がった話は、まだ、わからない。
ケン:じゃあ、日本に来る友だちには、何に気をつけて、と言えばいいですか?
ケンゾー:お祝いの贈り物で、4個入りや9個入りを避けて、3個か5個を選ぶ。それで、ほぼ十分です。お祝いのお金も、4や9のつく金額は、避けておくのが無難でしょう。
ケンゾー:病院やホテルで、404号室がなくても、驚かなくていい。泊まる部屋が4階でも、心配はいりません。そして、数を数えるときに、よん、と言うのは、ふつうの日本語です。
ケン:ケンゾーさん。最初、わたし、4階がない国、だと思い込んでいました。でも、ほどいてみたら、4階はあって、抜けているのは、部屋の番号だけ。思い込みって、こうやって、できるんですね。
ケンゾー:いい気づきですね。ほんとうに知りたいのは、理由の先。今どこで、どれくらい、なんですよね。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日本の病院には、4階は、ある。ないのは、404号室。
ケン:これは、言いたくなりますね。
ケンゾー:地域ごとの比べ表、論文と再分析、贈り物の数の出典は、J-Times の記事、なぜ日本では4が不吉なのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
第1回 なぜ日本人はマスクをするの? — 顔を隠したいから、だけじゃない3つの理由
台本を読む
ケン:ケンゾーさん。日本人がマスクをするのって、結局、顔を見られたくないから、でしょう? 海外の友だちに、よく聞かれるんです。
ケンゾー:たしかに、それも理由の一つです。調査にも、ちゃんと出てきます。でも、それだけで片づけると、いちばん大きな理由を見落とすんですよ。
ケン:いちばん大きな理由?
ケンゾー:今日は、それをほどいていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、なぜ?ニッポン。当たり前の、ふしぎをほどく。案内役のケンゾーです。
ケン:それ、本当? と聞く役の、ケンです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、国や業界団体の資料、調査で確かめたものです。
ケンゾー:第1回の問いは、これです。なぜ日本人は、マスクをするのか。答えを先に言うと、100年前から続く、感染予防の習慣。4割を超える人が悩む、花粉症。そして、周りへの配慮。この3つが、重なった結果です。
ケン:100年前? コロナからじゃないんですか?
ケンゾー:もっと前です。マスクの業界団体によると、日本のマスクは、明治の初めに始まりました。真ちゅうの金網に布を付けたもので、主に、ほこりよけでした。
ケンゾー:転機は、1918年から1921年の、スペインかぜです。当時の内務省の報告書は、患者を、およそ2,380万人、亡くなった人を、38万8,727人と数えています。
ケン:そんなに……。
ケンゾー:その報告書に、国が作ったポスターが載っているんです。混み合った電車の中で、咳をする男性から、ばい菌の雲が乗客に降りかかる。マスクをした人だけが、守られている。添えられた言葉は、マスクをかけぬ、命知らず!
ケン:命知らず、ですか。なかなか強い。
ケンゾー:でも、つまり、コロナの100年前から、国は、混んだ電車ではマスクを、と呼びかけていたんです。業界団体は、この流行をきっかけに、マスクが予防の品として注目されるようになった、としています。
ケン:なるほど。では、ふたつめの、花粉症。
ケンゾー:これが、いちばん大きいかもしれません。2019年の全国の調査では、花粉症の人の割合は、42.5パーセント。そのうち、スギ花粉症が38.8パーセント。ほぼ3人に1人です。1998年には、19.6パーセントでした。
ケン:4割も? 本当ですか?
ケンゾー:いい疑問です。正直に言うと、この調査の対象は、全国の耳鼻咽喉科のお医者さんと、その家族なんです。国民から無作為に選んだわけではないので、少し割り引いて読む必要があります。ただ、環境省も、政府の会議も、この数字を使っていて、2023年には政府が、花粉症を社会問題と位置づけました。
ケンゾー:そして、環境省の資料によれば、マスクをしない場合に比べて、ふつうのマスクで、鼻に入る花粉が、およそ7割。花粉症用のマスクなら、およそ8割4分、減ったそうです。
ケン:だから、春になると、外でもマスクの人が増えるのか。
ケンゾー:そうなんです。屋外でも、なぜ? という海外からの疑問への答えの中心は、ここにあります。花粉が飛ぶのは、外ですから。
ケン:みっつめが、周りへの配慮。でも、国はもう、マスクは自由、と言っていませんでしたか?
ケンゾー:2023年の3月13日から、国は、マスクを一律に求めるのをやめて、個人の判断に任せました。ただ、厚生労働省は、今も、いくつかの場面では着用を勧めています。病院に行くとき。お年寄りの多い施設を訪ねるとき。そして、通勤ラッシュの、混んだ電車やバス。
ケンゾー:注目してほしいのは、その理由です。国が示すマスクの理由の多くは、着ける本人ではなく、周りの人、特に重症化しやすい人を守ること、に置かれているんです。
ケン:100年前のポスターと、同じですね。乗り合わせた人を、守る。
ケンゾー:ええ。しかも同時に、国は、本人の意思に反して、マスクを着けさせたり、外させたりしないように、とも求めています。
ケン:実際、今は、どのくらいの人が着けているんですか?
ケンゾー:ある民間の追跡調査では、公共の場でマスクを着けた人は、2023年3月に70.7パーセント。いちばん低かったのは、2025年8月で、38.2パーセント。そして、インフルエンザの季節になると、また5割台に上がっています。
ケン:じゃあ、最初の話。顔を見られたくない、は?
ケンゾー:それも、調査に出てきます。2023年5月の、ある1万人の調査では、マスクを続けたい人の、およそ7割が、自分が感染したくないから、を選びました。これは、どの年代でも1位。ただ、10代では、48.8パーセントが、外すのが恥ずかしい、顔を見られたくない、を選んでいます。
ケンゾー:それから、2020年3月の、社会心理学の調査では、マスクを着ける気持ちをいちばんよく説明したのは、周りの人がしているのを見ると、自分もすべきだと思う、という気持ちでした。
ケン:周りに合わせる。それも、ありますね。
ケンゾー:一方で、2023年の調査では、5類に移ってから、周りの目が気にならなくなった、という人が増えていきました。外すことも、今では、ごく普通の選択です。
ケンゾー:ここからは、わたしたち編集部の解釈です。日本のマスクは、公衆衛生と、礼儀と、身だしなみが、重なる場所にある。人に迷惑をかけない、という作法とも、つながっている。でも、だから義務だとか、誰もが着けている、というわけではありません。
ケン:ケンゾーさん。最初、わたし、顔を隠したいから、で終わらせようとしてました。でも、ほどいてみたら、歴史と、花粉と、周りの人。理由が、ひとつじゃなかった。
ケンゾー:そうなんです。なぜ? と聞かれたとき、一つの国民性で答えたくなる。でも、たいていは、いくつもの理由が、重なっているんですよね。
ケンゾー:最後に、明日、誰かに話したくなる一言を。日本のマスクは、100年前の電車のポスターから始まった、乗り合わせた人を守る、習慣でもある。
ケン:海外の友だちに、今度はそう答えてみます。それと、春に会うときは、花粉の話も。
ケンゾー:年表、調査の出典、ポスターの話は、J-Times の記事、なぜ日本人はマスクをするのか、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
ケン:次回もお楽しみに。
ケンゾー:なぜ?ニッポン。お相手は、ケンゾーと、
ケン:ケンでした。
