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なぜ日本人はクリスマスにケンタッキーを食べるのか — 1974年の広告と、3つの「始まりの話」

なぜ日本人はクリスマスにケンタッキーを食べるのか — 1974年の広告と、3つの「始まりの話」

記録で確かめられること、会社と当事者の語りでしかないこと、そして売上の実数

J-Times Editorial·2026年10月26日·1 min

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J-Times 編集部 / J-Times Editorial Team

2026年10月26日1 min4 閲覧
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日本のクリスマスにケンタッキーが定着したのは、日本KFCが1974年12月に始めたクリスマスキャンペーンから。「外国人客が七面鳥の代わりに買った」などの起源譚は会社と当事者の語りで、記録で確かめられるのは年表と売上だ。2023年は3日間で70億円(速報値)。公式資料で経緯を整理する。

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なぜ日本人はクリスマスにケンタッキーを食べるのか

答え(2026-09-23時点):日本KFCが1974年12月に始めたクリスマスキャンペーンが定着したから。有名な起源譚は会社と当事者の逸話で、記録で確かめられるのは年表と売上だ。

12月になると、全国のケンタッキーフライドチキン(KFC)の店先でカーネル・サンダース像がサンタクロースの衣装を着る。家族はバーレルを何週間も前に予約し、24日には店の前に列ができる。海外から来た人の目には古くからの風習に見えるが、実際には50年ほどの歴史しかなく、始まりは広告キャンペーンだった。この話を丁寧に扱う価値があるのは、「どう始まったか」について会社と当事者が語る少なくとも3つの版があり、しかも互いに食い違っているからだ。本稿では、日本KFC自身の記録で確かめられることと、逸話にとどまることを分け、会社が実際に公表した売上の数字を示す。

ケンタッキーがクリスマスの定番になったのはいつからか

日本KFCの公式の沿革には「1974年12月 初のクリスマスキャンペーン実施」とある。会社の設立から4年後のことだ。

日本KFCの沿革によれば、KFCの日本での歩みは1970年に始まる。1970年3月、大阪の日本万国博覧会に米国KFCが実験店を出し、1日に最高280万円を売り上げた。同年7月、米国ケンタッキー・フライド・チキン・コーポレーションと三菱商事の折半出資で日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社が設立され、11月に名古屋市西区で1号店の名西店が開店した。東京へは1971年7月、5号店の青山店から進出している。テレビCMの放映開始は1973年10月、100号店の開店は同年12月だ。

その次に来るのが、本稿の主題にあたる「1974年12月 初のクリスマスキャンペーン実施」という一行である。同じ記述は日本KFCホールディングスのコミュニケーションレポートの年表にもある。キャンペーンの合言葉「クリスマスにはケンタッキー」については、英BBC(2016年)がローマ字で Kurisumasu ni wa Kentakkii と紹介し、ビジネスインサイダー・ジャパン(2018年)も1974年に全国展開したと書いている。ただし会社の沿革が記しているのはキャンペーンの実施だけで、コピーの文言までは載っていない。そのため本稿では、コピーの文言はこれらの報道に基づくものとして扱う。

さらに2つの年号は日本KFCのニュースリリースで確かめられる。クリスマスの象徴である「パーティバーレル」は1985年に発売が始まり、2025年12月1日には発売40周年を記念した新しいテレビCMが公開された。パーティバーレルの特典だった「クリスマス絵皿」は1995年に始まり、29年目の2024年で終了すると同社が発表している。

発想はどこから来たのか — 3つの「始まりの話」

起源を一つに決める記録はない。会社と、発案者とされる本人が語った版が少なくとも3つあり、どれも逸話である。

中心人物は**大河原毅(おおかわら・たけし)**氏だ。日本KFCの初期に店長を務め、のちに会社を率いた。BBCは同氏をハーバード大学出身とし、1984年から2002年まで日本KFCの社長兼CEOだったと書いている。ビジネスインサイダー・ジャパンも1984年に社長に就いたとしている。3つの版で食い違うのは、同氏が何に着想を得たかという点である。

版1:七面鳥を恋しがる外国人客。 BBCの2016年の記事では、日本KFCの広報担当者(BBCの表記では Motoichi Nakatani 氏)が次のように説明している。「日本で最初のKFCの店長」だった大河原氏が、店で外国人客が「クリスマスに七面鳥が食べられない」と話しているのを耳にし、クリスマス用の「パーティバーレル」を思いついた。外食産業の情報サイト「外食ドットビズ」の連載「外食企業物語」にも似た話が載っている。こちらは舞台が東京の青山店で、時期は1971年か72年とされる。クリスマスパーティーを開く外国人客が「日本では七面鳥が手に入らないから、KFCで代わりにする」と話したのがきっかけだという。ビジネスインサイダーによれば、KFCを世界展開するヤム・ブランズも、来日中の外国人が七面鳥の代わりにチキンを売ることを提案したと説明している。

版2:幼稚園のクリスマス会。 大河原氏本人は、2018年にビジネスインサイダーのポッドキャスト「Household Name」で別の話をした。店の近くのミッション系幼稚園から、クリスマス会でフライドチキンを食べたいのでサンタ役をしてほしいと頼まれた。同氏はサンタに扮してバーレルを抱え、教室を踊って回った。会は大成功で、ほかの幼稚園からも同じ依頼が来たという。

版3:「嘘をついた」。 同じポッドキャストで大河原氏は、NHKの取材で「フライドチキンは西洋のクリスマスの習慣なのか」と聞かれ、七面鳥を食べると知りながら「はい」と答えたと語った。「嘘をついたのです」と述べ、今も後悔していると付け加えている。ビジネスインサイダーはこの話とヤム・ブランズの説明を並べて紹介するだけで、どちらが正しいかは判断していない。本稿でも判断はできない。

逸話どうしの細部にも食い違いがある。英語圏の記事は大河原氏を「日本で最初のKFCの店長」と書くが、会社の沿革によれば1号店は名古屋の名西店だ。一方、日本語の業界記事は七面鳥の会話の舞台を5号店の青山店としている。どの店の話なのかを確定できる資料は見つからなかった。時期にもずれがある。BBCの版では大河原氏が1970年の開店直後に「パーティバーレル」を思いついたことになっているが、日本KFCの2025年のリリースは商品としての発売を1985年としている。70年代に生まれた発想が、のちに商品名になったとも考えられる。ただ、両者をつなぐ資料は見当たらなかった。

「外国人がケンタッキーを七面鳥と間違えた」は本当か

そうした記録はない。七面鳥の話は日本KFCと親会社が語る逸話で、中身も「間違えた」ではない。七面鳥が手に入りにくいので、外国人客が代わりにチキンを選んだという話だ。

ネット上で最も崩れて伝わっているのがこの部分である。本稿でたどれた限り、どの版でも外国人客はKFCがフライドチキンだとよく分かっていた。話の要点は、日本で買える中ではそれがクリスマスのローストに一番近かった、ということにある。それでも、この話が伝わっているのは会社の広報と業界記事を通じてだけで、しかも数十年後の証言だ。会社の「創業伝説」として読むのが妥当だろう。

逆向きの俗説もある。「アメリカでもクリスマスにはフライドチキンを食べる」というものだ。これは事実ではない。キャンペーンの発案者とされる大河原氏自身が、報道機関にそう信じさせたままにしたと公に語っている。

記録で確かめられることは多くないが、確かだ。1974年12月の初のクリスマスキャンペーン(会社の沿革)、1985年のパーティバーレル発売(会社のリリース)、そして2021年以降に会社が毎年末に出した売上の発表である。

ケンタッキーにとってクリスマスはどれほど大きいのか

日本KFCの発表では、KFC店舗の売上は2021年が7日間で72億円、2022年が3日間で64億円、2023年が3日間で70億円だった。いずれも速報値である。

日本KFCは少なくとも2021年から2023年まで、毎年12月28日に「ケンタッキークリスマス」の御礼を公表し、クリスマス期間のKFC店舗の売上合計を示してきた。集計期間の長さが年によって違うので、数字をそのまま並べて増減を読むことはできない。

年日本KFCの記録・発表期間出典
1970万博に実験店(3月)、会社設立(7月)、1号店・名古屋(11月)—日本KFC 沿革
1971青山店(5号店、東京1号)開店7月日本KFC 沿革
1973テレビCM放映開始10月日本KFC 沿革
1974初のクリスマスキャンペーン実施12月日本KFC 沿革・コミュニケーションレポート
1984大河原毅氏が社長に就任—BBC(2016)、ビジネスインサイダー(2018)
1985パーティバーレル発売—日本KFC リリース(2025年12月1日)
1995〜2024パーティバーレルのクリスマス絵皿(2024年で終了)—日本KFC リリース(2024年11月1日)
2021KFC店舗売上 72億円(速報値)7日間(12月20〜26日)日本KFC(2021年12月28日)、流通ニュース
2022KFC店舗売上 64億円(速報値)3日間(12月23〜25日)日本KFC(2022年12月28日)
2023KFC店舗売上 70億円(速報値)3日間(12月23〜25日)日本KFC(2023年12月28日)、フードリンクニュース

規模感をつかむ補足として、外食業界紙のフードリンクニュースは、日本KFCホールディングスの2023年4〜12月期決算を伝える記事で、この70億円は直営・フランチャイズ合わせて全1,229店舗の売上だと書いている。2024年と2025年のクリスマスについては、2026-09-23時点で日本KFCのニュースリリースに同種の売上発表を見つけられなかった。なお沿革によれば、同社は2024年にクリスピー株式会社の子会社になっている。

よく引用されるのに、あえて表に入れなかった数字もある。BBCは2016年に「推計360万世帯」がクリスマスにKFCを食べると書き、「KFCによれば」クリスマス商品が年間売上の約3分の1を占めるとも伝えた。どちらも日本KFCの公表資料までたどれなかったため、本稿では事実として扱わない。

一方で、会社のリリースからはクリスマスの「段取り」がはっきり読み取れる。2024年のクリスマスでは、11月1日からネットオーダーで予約を受け付け、受け取りは12月20日から25日だった。12月12日までにパーティバーレルを予約すると割引になる「Xmas早割」もあった。2025年には、混雑する24日と25日のピーク時間帯を避けた受け取りを対象に、ネットオーダー限定の「オフピーク予約」が加わっている。いまや日本KFCは、需要を生み出すことより、集中する需要をどうさばくかに力を入れていると言える。

キリスト教徒の少ない国で、なぜ定着したのか

日本のクリスマスは決まった料理のない世俗の行事で、そこへKFCが「この日に食べるもの」を差し出したから。これは解釈だが、根拠のある解釈だ。

まず事実から確認する。日本のキリスト教徒は少数派だ。文化庁の宗教統計調査では、2023年12月31日時点でキリスト教系の信者数は1,246,742人と報告されている。総務省統計局の人口推計では、2023年10月1日時点の総人口は1億2435万2千人だから、およそ1%にあたる。ただし信者数は各宗教団体の自己申告で、数え方も団体ごとに違う。また12月25日は内閣府が示す「国民の祝日」に入っていない。受け継がれてきたクリスマスの献立がそもそもなかったので、競う相手がいなかったのである。

ここから先は解釈で、そのことを明記しておく。このキャンペーンを研究したエムリヨン経営大学院(フランス)のヨーナス・ロッカ准教授は、BBCにこう語っている(編集部訳)。「空白を埋めたのです。日本にはクリスマスの伝統がなかった。そこへKFCが来て『クリスマスにはこうするものだ』と示した」。同准教授は、クリスマスが休日でない日本で、七面鳥やハムを一日がかりで料理するのは現実的でないとも指摘している。同じBBCの記事によれば、日本ではクリスマスをバレンタインデーのような恋人たちの日として過ごし、外で食事をする人もいる。一方で家族は家に集まる。買ってくるだけで済むバーレルは、この「家族のクリスマス」によく合った。

最後の一押しは広告だった。日本KFCは最初のクリスマスキャンペーンの前年、1973年10月にテレビCMを始めている。2025年12月のCMは、パーティバーレルの40年だけで一本の物語に仕立てられていた。BGMは竹内まりやさんの「すてきなホリデイ」で、同社はこの曲を「KFCのクリスマスCMの定番ソング」と呼んでいる。BBCが取材した、東京のスポーツ用品会社に勤める父親の言葉(編集部訳)が、この習慣の今の姿をよく表している。「チキンが目的じゃない。家族が集まることが目的で、そこにたまたまチキンがあるんです」。

日本の「当たり前」が海外からどう見えているかは、外国人が驚く日本:当たり前の中に隠れた15の奇跡でも紹介している。

クリスマスとケンタッキー:よくある質問

日本人は本当にクリスマスにケンタッキーを食べるのか? 多くの人が食べるが、全員ではない。日本KFCの発表では、2023年12月23〜25日のKFC店舗売上は70億円(速報値)だった。何世帯が食べているかを示す公式の数字はない。

クリスマスにケンタッキーを始めたのは誰か? 日本KFCが1974年12月に初のクリスマスキャンペーンを実施した。発案者としては、初期の店長で1984年に社長になった大河原毅氏の名が挙がることが多い。ただ、着想の経緯についての話は逸話で、版によって内容が違う。

外国人がケンタッキーを七面鳥と間違えたというのは本当か? それを示す記録はない。会社の逸話は、七面鳥が手に入りにくい日本で、外国人客が代わりにKFCを買ったという内容だ。

クリスマスのケンタッキーは予約が必要か? 予約しておくのが確実だ。2024年のクリスマスでは、日本KFCは11月1日に予約受付を始め、受け取りは12月20〜25日だった。2026年の日程は、2026-09-23時点では発表されていない。

アメリカでもクリスマスにフライドチキンを食べるのか? 一般的な習慣ではない。日本のキャンペーンの発案者とされる大河原氏自身が、そう信じさせたままにしたと語っている。

出典・確認日(2026-09-23確認)

J-Times 編集部。記載の事実は2026-09-23時点。

アイキャッチ画像: rumpleteaser from Nagoya, Japan / Wikimedia Commons / CC BY 2.0 (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Colonel_Sanders_Santa_(4137712229).jpg)

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