メインコンテンツへスキップ
本文へスキップ
日本人はなぜ長生きなのか — 平均寿命のデータで確かめる、医療・食事・暮らしの役割
Life & Philosophy

日本人はなぜ長生きなのか — 平均寿命のデータで確かめる、医療・食事・暮らしの役割

2025年の平均寿命は男81.35年・女87.33年。長寿を支えたのは国民皆保険と公衆衛生、減塩と脳卒中の減少、肥満の少なさ。発酵食品・入浴・生きがいの研究を確かめ、今日からできることをまとめた

J-Times Editorial

J-Times 編集部 / J-Times Editorial Team

2026年3月25日更新: 2026年10月26日14 min358 閲覧
共有
この記事を音声で聴く

第6回 日本人はなぜ長生き? — 「和食の秘密」より先にあった、3つの理由

なぜ?ニッポン · 7分

番組のほかの回を聴く声は AI で作っています。内容は J-Times 編集部が確認しました。

2025年の日本人の平均寿命は男81.35年・女87.33年。女性は比較できる国の中で最も長い。長寿を支えたのは「医療でも遺伝でもない何か」ではなく、国民皆保険と公衆衛生、減塩と脳卒中の減少、肥満の少なさ、食事と暮らしの組み合わせだった。研究の数字を確かめ、今日からできることをまとめた。

この記事を読むと +5 MTC を獲得できます

答え(2026-10-26時点):厚生労働省の令和7年(2025年)簡易生命表で、日本人の平均寿命は男81.35年、女87.33年です。女性は同省が比べた国の中で最も長く、男性は7番目でした。長生きの理由は「医療でも遺伝でもない」秘密ではありません。研究がまず挙げるのは、1961年に始まった国民皆保険と地域の公衆衛生、塩を減らして脳卒中が大きく減ったこと、肥満が少ないことです。食事、入浴、生きがいも関わっていそうですが、どれも「これさえやれば」という魔法ではありません。

この記事は2026年3月に公開した記事を、一次資料と論文で確かめ直して書き改めたものです。旧版の「医療でも遺伝でもなかった」という結論、「ハーバード大学が長寿の30%以上は食文化と結論」「愛媛大学の研究で心疾患リスク28%低下」「東北大学の7万人調査」などは、根拠が見つからないか、研究の中身と違っていたため改めました(末尾「この記事で直した点」)。

平均寿命の数字の裏には、戦後の結核や感染症と闘った医師と保健師、減塩を呼びかけ続けた地域の食生活改善推進員、毎日の食卓を整えてきた家族がいます。長寿は一人の努力だけで生まれたものではありません。以下、よく聞かれる問いに順に答えます。

日本の家庭の夕食。ご飯、焼き魚、豆腐、漬物、ひじき、切り干し大根、具だくさんの味噌汁、みかん。写真:サフィル / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(2017年撮影)
日本の家庭の夕食。ご飯、焼き魚、豆腐、漬物、ひじき、切り干し大根、具だくさんの味噌汁、みかん。写真:サフィル / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(2017年撮影)

写真:サフィル / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

日本人の平均寿命は何歳で、本当に「世界一」なのか?

2025年の平均寿命は男81.35年(前年比+0.25年)、女87.33年(同+0.20年)。厚生労働省の国際比較表では、女性は掲載国の中で最も長く、男性はスウェーデン(82.52年)、スイス(82.4年)、イタリア、ノルウェー、キプロス、スペインに次ぐ7番目です。

「世界一」と言えるかどうかは、何を比べるかで変わります。

  • 国・地域を広く見ると: 同じ表の参考欄で、香港は男83.27年・女88.73年と、男女とも日本より長い(香港は国ではないため、表の本体ではなく参考として載っています)。
  • WHOの推計(男女合計)では: 2023年の出生時平均余命は日本が83.9年で、185か国の中で最も長い。
  • 健康に暮らせる期間(健康寿命)では: WHOの推計で日本は72.2年。シンガポールに次ぐ2番目です。

旧版は「女性87.14歳、男性81.09歳(2024年)」としていましたが、87.14は2023年の女性の値でした。2024年は男81.09年・女87.13年です。

100歳以上の人は何人いるのか?

2026年9月1日時点で107,677人です。統計を取り始めてから初めて10万人を超え、56年連続で過去最多になりました。女性が94,298人と約9割(87.6%)を占めます。

旧版の「9万人を超える」は2025年の値(99,763人)に近い表現でした。100歳以上の人の数は、平均寿命が延びたことと、ちょうど100歳前後の世代の人数の両方で決まります。

戦後、平均寿命はなぜこれほど延びたのか?

1947年の平均寿命は男50.06年、女53.96年でした。そこから約80年で30年以上延びています。日本人の遺伝子がこの間に変わったわけではありません。延びた理由は、暮らしと社会の変化です。

医学誌ランセットの日本特集(2011年)の論文は、この50年の健康の伸びを次のように説明しています。

  • 戦後すぐ: 結核などの感染症による死亡が急速に減った。
  • 1960年代以降: 脳卒中による死亡が大きく減った。高血圧対策などの地域の予防活動と、1961年に始まった国民皆保険を通じて医療が広く使えるようになったことが寄与した。
  • 格差の小ささ: 教育の機会と、お金の心配なく医療にかかれることが、健康の格差を小さくした。

つまり、旧版の「医療でも遺伝でもなかった」は逆です。医療を誰もが使える仕組みと、地域の公衆衛生こそが、まず挙げられる理由でした。遺伝の影響を否定する研究があるわけではありませんが、短期間でここまで延びたことは、遺伝だけでは説明できません。

和食は本当に長生きに効いているのか?

効いていそうですが、「和食なら何でもいい」わけではありません。国立がん研究センターの津金昌一郎氏の総説(2021年)は、日本の心臓病とがんの死亡が少ない理由として、肥満の少なさ、赤肉が少なく魚が多いこと、大豆製品や緑茶などを挙げています。一方で、昔の日本の食事は塩が多く、脳卒中と胃がんの大きな原因でした。

同じ総説によると、1960年代の日本はG7の中で平均寿命が最も短い国でした。脳卒中と胃がんの死亡が多かったためです。その後、塩や塩辛い食べ物が減り、肉や牛乳・乳製品をとる量が増えて血圧が下がったとみられ、脳卒中と胃がんの死亡が大きく減りました。

発酵食品については、約9万3千人を追跡した日本の研究(JPHC研究、BMJ 2020年)で、納豆や味噌など発酵性大豆製品を多く食べる人ほど、全体の死亡リスクが約1割低い傾向がありました。ただし大豆製品全体では関連は見られず、研究者自身が「ほかの要因の影響を受けている可能性があり、慎重に解釈すべき」としています。発酵や麹の文化については麹×発酵×旅——世界が「食」で日本に恋する理由もどうぞ。

そして、塩は今も課題です。2024年の国民健康・栄養調査で、成人の食塩摂取量の平均は1日9.6g(男10.5g、女8.9g)でした。国の目標(7g)にもまだ届いていません。味噌汁や漬物は発酵食品ですが、塩分も多い食べ物です。

旧版の「ハーバード大学の研究チームが、日本人の長寿の30%以上は食文化で説明できると結論」は、該当する研究を見つけられなかったため削除しました。

「腹八分目」で寿命は延びるのか?

人では、まだ確かめられていません。動物ではカロリーを減らすと寿命が延びる例がありますが、人で寿命まで測った研究はありません。米国立衛生研究所(NIH)が支援した2年間の試験(CALERIE)では、平均約12%のカロリー制限で、老化に関わる体の指標が改善しました。

腹八分目は、食べ過ぎて太らないための昔からの知恵として、今も意味があります。ただ旧版の「サーチュイン遺伝子の活性化で科学的に証明されている」「日本人の一食は欧米より20〜30%少なく、この差が平均寿命の差を生む」は、人の寿命についての証拠としては言い過ぎでした。

沖縄の例も教えてくれます。1985年、沖縄県の男性の平均寿命は都道府県で1位でした。それが2020年には43位、女性も長く1位だったのが16位になっています。食や暮らしが変わると、長寿の地域でも順位は変わるのです(沖縄の伝統食については沖縄人を100歳まで生かす7つの神聖な食物も参照)。

毎日お風呂に入ると長生きできるのか?

関連は見つかっています。約3万人の中高年を約20年追った日本の研究(JPHC研究、医学誌Heart 2020年)では、ほぼ毎日湯船に入る人は、週2回以下の人より心臓病と脳卒中を合わせた発症リスクが28%低かった。ただし、これは「関連」です。

この研究は大阪大学などの研究グループによるもので、旧版が書いた「愛媛大学の研究」ではありません。同じ号の論評は、入浴できる生活の余裕など、ほかの要因が結果に影響している可能性に注意を促しています。

入浴には危険もあります。消費者庁によると、高齢者の不慮の溺死・溺水による死亡は2011年以降、交通事故による死亡より多く、その多くが家や施設の浴槽で起きています(2019年の浴槽での死亡は4,900人)。11月〜4月の冬に多く、目安は「湯温41℃以下、湯につかるのは10分まで」です。温泉の作法は温泉のマナー完全ガイドにまとめています。

「生きがい」は寿命に関係するのか?

関係がありそうです。宮城県大崎市の40〜79歳4万3,391人を約7年追った東北大学の研究(2008年)では、「生きがいがない」と答えた人は、「ある」と答えた人より、死亡のリスクが約1.5倍高かった。差は主に心臓・血管の病気と、事故や自殺などの外因による死亡でした。

旧版の「7万人の追跡調査」「死亡リスクが30%以上低い」は、人数が違っていたため直しました。「生きがい」は、毎朝起きる理由、誰かの役に立っている感覚、仕事や趣味や地域の役割など、人によって形が違います。言葉の意味は一生の見方が変わる「4つの日本語」でも取り上げています。

長生きと「元気に生きる」は同じなのか?

同じではありません。2022年の健康寿命(日常生活に制限なく暮らせる期間の平均)は男72.57年、女75.45年。平均寿命との差は男8.49年、女11.63年で、この期間は何らかの支えが必要になることが多いと考えられます。

この差は少しずつ縮んでいますが、長寿の国の本当の課題は「長く」より「元気に長く」です。睡眠の短さも気になる点で、日本人の睡眠時間の記事で取り上げています。

今日からできること(チェックリスト)

  • 塩を減らす: 汁物は具を多くして汁を少なめに。麺のつゆは飲み干さない。漬物や佃煮は量を決めて
  • 魚と大豆を週に何度か: 焼き魚、豆腐、納豆など。発酵食品も「塩分込み」で考える
  • 食べ過ぎない: 腹八分目は「やせる魔法」でなく「太らない習慣」として
  • お風呂は安全に: 脱衣所を暖め、湯温41℃以下・10分まで。飲酒後や食後すぐの入浴は避ける
  • 健診を受ける: 血圧と血糖を知ることが、脳卒中や心臓病を防ぐ第一歩
  • 役割を持つ: 仕事、趣味、地域、家族。小さくても「誰かに頼られる」場所を

よくある失敗

  • 「発酵食品は体にいい」と、味噌汁や漬物を増やして塩を取りすぎる
  • サプリメントや一つの食品に長寿を期待する
  • 熱い湯に長くつかって「体にいい」と思い込む

よくある質問

Q. 日本人の長寿は遺伝のおかげではないの? A. 遺伝がまったく関係ないとは言えませんが、1947年から約80年で平均寿命が30年以上延びたのは、遺伝子ではなく社会と暮らしが変わったからです。

Q. 日本人の女性は本当に世界一長生き? A. 厚生労働省が比べた国の中では最も長い一方、国ではない香港は日本より長くなっています。WHOの男女合計の推計では、日本は185か国で最も長い国です。

Q. 沖縄の人は今も日本一の長寿? A. いいえ。2020年の都道府県別生命表で、沖縄県は男43位、女16位です。

Q. 毎日湯船に入れば心臓病を防げる? A. 研究で見つかったのは「関連」で、入浴そのものの効果かどうかはまだ分かりません。高齢の方は、冬の浴室での事故にも気をつけてください。

Q. 和食に変えれば長生きできる? A. 魚・大豆・野菜の多い食事は良い方向ですが、塩分には注意が必要です。食事だけでなく、健診や運動、人とのつながりも合わせて考えましょう。

この記事で直した点

  • 題名の「医療でも遺伝でもなかった」→ 研究は国民皆保険と公衆衛生をまず挙げているため、題名と結論を改めた
  • 「女性87.14歳、男性81.09歳(2024年)」→ 2025年の男81.35年・女87.33年に更新(87.14は2023年の値)
  • 「女性は世界1位、男性も世界トップクラス」→ 女性は比較国で最長、男性は7位。香港とWHOの推計を補足
  • 「100歳以上は9万人超」→ 2026年9月の107,677人に更新
  • 「ハーバード大学:長寿の30%以上は食文化」→ 確認できず削除
  • 「腹八分目はサーチュイン遺伝子の活性化で科学的に証明」「一食20〜30%少ない」→ 人での証拠はないため書き換え
  • 「愛媛大学の研究で心疾患リスク28%低下」→ 大阪大学などのJPHC研究(心臓病と脳卒中を合わせて28%低い)に訂正
  • 「東北大学の7万人調査、死亡リスク30%以上低い」→ 4万3,391人、生きがいがない人のリスク約1.5倍に訂正
  • 「日本人の腸内フローラはビフィズス菌の比率が高く免疫を高める」→ 長寿との因果を示す資料を確認できず削除
  • 新たに、戦後の延びの理由、減塩、沖縄の順位の変化、健康寿命、入浴事故、チェックリストを追加

出典と確認日(すべて2026-10-26に確認)

文・J-Times 編集部(2026-10-26時点の情報)

#bathing#ikigai#Japanese diet#life expectancy#longevity#Public health

この記事について

執筆
J-Times 編集部
公開
更新

出典は本文中と末尾に示しています。誤りに気づいたらお知らせください。 編集方針・訂正のご連絡

J-Times は Jon&Coo Inc. が運営しています。

この記事を共有する

著者

J-Times Editorial

J-Times 編集部 / J-Times Editorial Team