
和のこころ、ひもとく
日本文化の「なぜ」を、10分の会話でひもとく J-Times の日本語ポッドキャスト。祭り・作法・美意識・歴史の問いをひとつ取り上げ、明日の自分にできることをひとつ手渡します。声は AI で作っています。内容は J-Times 編集部が公式の情報で確かめたものです。
エピソード (6)

日本に老舗が多いのはなぜ? 創業100年超は《4万6,708社|よんまんろくせんななひゃくはっしゃ》。最古とされる金剛組の1400年は、焼失・困窮・2006年の経営の行き詰まりを越えて「技と仕組み」が受け継がれた記録でした。老舗が多い4つの理由、倒産の現実、「三方よし」の本当の出どころ、今日から使える続けるための知恵まで、ケンゾーとキョウコがひもときます。
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相撲部屋の朝稽古は見学できる? 部屋は「力士の家」。朝ごはん抜きで始まる稽古の流れ、見られない時期(本場所・巡業・年末年始)、確かめられた3つの入口、座り方や撮影のマナー、ちゃんこの本当の意味まで、ケンゾーとキョウコがひもときます(日程は2026年10月2日時点)。
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九谷焼・備前焼・益子焼、どう違う? 答えは器の表面にある「絵・土肌・釉薬」。色絵の磁器、炎と土だけの焼き締め、暮らしの厚手の陶器の成り立ちと、窯変の名前、見分け方の3つの手順、伝統証紙、電子レンジや手入れまで、ケンゾーとキョウコがひもときます。
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わびさびって、結局なに? 茶の湯で育った「わび」と俳諧で育った「さび」の違い、古びたもの・足りないものを美しいと感じる理由、明日から暮らしの中で見つけるコツまで、ケンゾーとキョウコがひもときます。
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見るだけじゃなく、祭りの「輪」に入るには? 祭りは神さまへのご奉仕であること、氏子と町会の役割、神輿を担ぐ・盆踊りに加わる・手伝うときの作法と最初の一歩まで、ケンゾーとキョウコがひもときます。
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酉の市で、なぜ熊手を買うの? 始まりの話、熊手の買い方と手締め、古い熊手の納め方、三の酉の言い伝えまで。2026年は11月7日(土)と19日(木)。
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番組の会話をそのまま文字にしたものです。声は AI で作っています。
第6回 日本に老舗が多いのはなぜ? — 金剛組の1400年と、続けるための知恵
台本を読む
キョウコ:ねえケンゾーさん。京都を歩いていると、創業何百年、っていう、のれんのお店によく出会うんです。どうして日本には、こんなに古いお店が多いんでしょう。
ケンゾー:気になりますよね。でも、実際の記録を読むと、何もなく続いた、という話は、ほとんどないんです。焼けて、借金をして、何度も途切れかけて。そのたびに、誰かが手を打ってきた。
キョウコ:平穏に続いたわけじゃ、ないんですね。
ケンゾー:今日は、それを、いっしょにひもといていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、企業調査の会社や、国、会社自身の記録で確かめたものです。
ケンゾー:第6回の問いは、これです。日本に、老舗が多いのは、なぜなのか。そして、そこから、わたしたちは何を学べるのか。
キョウコ:まず、どのくらいあるんですか?
ケンゾー:帝国データバンクの集計では、2025年12月の時点で、創業100年を超える会社は、4万6,708社。全部の会社の、3.11パーセントです。1,000年を超える会社も、11社あります。
キョウコ:1,000年!
ケンゾー:ただ、多くは、明治と大正に生まれて、100年を越えた会社です。江戸時代より前からの会社は、ぐっと少ない。そして、都道府県で老舗の割合がいちばん高いのは、京都府。調査会社は、その理由のひとつに、戦災が比較的少なかったことを挙げています。
キョウコ:建物ごと焼けてしまったら、続けたくても、続けられない。
ケンゾー:そうなんです。老舗の多さは、文化だけでなく、地理と歴史の偶然にも、支えられているんです。
キョウコ:いちばん古い会社は、どこなんですか?
ケンゾー:大阪の、金剛組。お寺や神社を建てる会社で、578年の創業とされています。会社の記録によると、聖徳太子に招かれて、百済から3人の工匠が来た。そのひとり、金剛重光が、初代です。四天王寺を建てたあとも、この地に留まって、寺を守ったと伝えています。
キョウコ:1400年以上前から。ずっと、同じ一族で?
ケンゾー:そこが、大事なところです。記録を追うと、1576年には、戦に巻き込まれて、四天王寺の伽藍が焼けた。1801年ごろには、落雷で五重塔が焼けた。明治には、お寺が土地を失って、仕事が苦しくなった。
ケンゾー:1932年には、仕事に困った末に、当主を失います。そのとき、妻のよしえさんが、歴代で初めての、女性の棟梁として、家業を継ぎました。戦争中は、お寺の仕事が途絶えて、軍用の木箱を作って、しのいだそうです。
キョウコ:木箱を作ってでも、つないだ。
ケンゾー:そして2006年。借金の返済が難しくなって、一族による経営は、ここで途切れます。今は、髙松建設のグループの一員です。
キョウコ:えっ、最古の老舗が、一度は。
ケンゾー:ええ。でも、金剛組という名前と、技と、宮大工たちは、引き継がれました。宮大工は、棟梁が率いる七つの組に分かれて、匠会という場で、互いに教え合いながら、若い人を育てている、と会社は書いています。
ケンゾー:つまり、続いたのは、一族というより、技と、それを受け継ぐ仕組み。そう見るほうが、記録には合っているんです。
キョウコ:では、日本に老舗が多い理由を、まとめると?
ケンゾー:記録から言えるのは、4つです。ひとつ。戦災が少なく、途切れにくい場所があった。ふたつ。お店を、個人の持ち物ではなく、家のものとして預かり、血がつながっていなくても継いできた。
キョウコ:血がつながっていなくても?
ケンゾー:跡取りがいなければ、婿養子を迎える。奉公人から番頭を育てる。お店の名を分けて独立させる、暖簾分けもありました。今の数字にも表れていて、2025年に社長が代わった会社では、社内から昇格した人が、親族が継ぐ場合を、初めて上回りました。
ケンゾー:みっつ。本業の看板を守りながら、稼ぎかたを変えてきた。老舗の業種でいちばん多いのは、じつは、貸事務所業です。長く持ってきた土地に、ビルを建てたんですね。
キョウコ:ちょっと、意外です。
ケンゾー:よっつ。時間を味方にする産業が多い。業種で老舗の割合がいちばん高いのは、日本酒づくりで、91.9パーセント。醤油や味噌も、上位に並びます。蔵と、微生物と、水と、杜氏の技。最初から、短く終わることを、前提にしていない仕事なんです。
キョウコ:じゃあ、老舗なら、もう安泰ですね。
ケンゾー:そうでもないんです。100年を超える老舗の倒産は、2024年に145件で、過去最多でした。原因の多くは、販売不振。値上げを価格に移せないことも、要因に挙げられています。後継者が決まっていない会社も、まだ半分あります。
キョウコ:100年は、ゴールじゃなくて、毎年、続けるかどうかを、問われ続けるんですね。
キョウコ:よく、三方よし、っていう言葉を聞きます。売り手よし、買い手よし、世間よし。あれは、近江商人の昔の言葉ですか?
ケンゾー:考えかたは、近江商人の心得として語られてきました。ただ、三方よし、という言葉そのものは、滋賀大学の研究者が、1988年の本で使ったのが最初とされます。言葉は新しい。でも、考えかたが新しいわけではない。なので、近江商人の精神を、後の研究者が三つにまとめた言葉、と紹介するのが正確です。
キョウコ:老舗から、わたしたちが今日から学べることは、ありますか?
ケンゾー:記事では、7つの手順にまとめました。今日は、そのうち3つを。ひとつめ。変えないものと、変えるものを、紙に分けて書く。金剛組は、伝統の技を守りながら、鉄筋コンクリートで寺を建てる方法も、早くから開発していました。守ったのは、技と、仕事の相手。方法は、変えたんです。
ケンゾー:ふたつめ。技を、人ではなく、仕組みで渡す。匠会のように、教え合う場を常に持っておけば、名人が一人抜けても、技が途切れにくい。
ケンゾー:みっつめ。家訓を、一枚に書く。金剛組の第32代は、焼けた塔を建て直した苦労を、家訓としてまとめ、遺言に残しました。長い理念でなくていい。わたしたちは誰のために、何をしないか。それを一枚に。
キョウコ:会社じゃなくても、使えますね。家族のこと、チームのこと、地域の集まりにも。
ケンゾー:まさに。それから、老舗という言葉。辞書によると、しにせは、仕似す、という動詞から来ています。先代の仕事に、似せる、という意味です。
ケンゾー:似せる、というのは、同じことを繰り返すことではなくて、時代が変わっても、同じ信用に届くように、やりかたを合わせ直すこと、なんだと思います。
キョウコ:今日の話を聞いて、思ったんです。老舗って、古いお店じゃなくて、続けることを、選び直してきた人たちの、記録なんですね。
ケンゾー:いい言葉ですね。最後に、明日できる小さなことを、ひとつ。自分の仕事や、家のことで、これを変えたら自分たちでなくなる、というものを、三つだけ書き出してみてください。それ以外は、変えていい。
キョウコ:わたしは、旅先で老舗に入ったら、撮影の前にひと声かけて、由来を聞いてみます。のれんの向こうは、仕事場ですもんね。
ケンゾー:金剛組の年表、老舗の数の表、事業承継の7つの手順と出典は、J-Times の記事、日本に老舗が多いのはなぜ、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回もお楽しみに。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
第5回 相撲部屋の朝稽古 — 見学できる? いつ、どうやって、何に気をつける?
台本を読む
キョウコ:ねえケンゾーさん。お相撲さんの朝稽古って、見に行けるんですか? 力士がぶつかり合う音を、すぐ近くで聞いてみたくて。
ケンゾー:見られる場所は、あります。でも、その前に、ひとつだけ知っておいてほしいことがあるんです。相撲部屋は、観光の施設ではない、ということ。
キョウコ:観光施設じゃない?
ケンゾー:親方と力士が、暮らして、稽古をする家なんです。今日は、その家の扉を、どう叩けばいいかを、いっしょにひもといていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、日本相撲協会や、東京都と区の観光の公式の情報で、2026年10月2日の時点で確かめたものです。
ケンゾー:第5回の問いは、これです。相撲部屋の朝稽古は、見学できるのか。いつ、どうやって、何に気をつければいいのか。
キョウコ:まず、相撲部屋って、どういうところなんですか?
ケンゾー:相撲部屋は、日本相撲協会の親方が営む、力士の養成所です。力士は、必ずどこかの部屋に所属します。協会の紹介のページには、2026年10月の時点で、45の部屋が載っていました。その多くが、両国の国技館のまわりに集まっています。
キョウコ:朝稽古は、何時ごろからなんですか?
ケンゾー:部屋によって違います。早いところでは、朝6時半ごろから。ある部屋は7時半から9時ごろ、と案内しています。そして力士は、朝ごはんを食べずに、稽古を始めるんです。
キョウコ:朝ごはん、抜きで!
ケンゾー:百科事典によると、力士は、昼と夜の、一日2回の食事で暮らしています。稽古は、まず体をほぐして、それから三番稽古。実力の近い2人が、何番も取り続けます。
ケンゾー:次に、申し合い。勝った力士が土俵に残って、次の相手を指名します。そして最後は、ぶつかり稽古で締めくくる。
キョウコ:勝った人が残って、次の相手を選ぶ。休む暇が、ないですね。
ケンゾー:毎朝、それを繰り返して、体と心をつくっていく。土俵の上の一番は、その積み重ねの、ほんの一瞬なんです。
キョウコ:じゃあ、いつ行っても、見られるんですか?
ケンゾー:そこが、いちばん大事なところです。本場所の期間中と、巡業の期間中は、東京の部屋で稽古は見られません。地方場所のあいだは、部屋ごと東京を離れて、稽古をしているんです。
ケンゾー:墨田区観光協会は、見学の対象から、こんな期間を外しています。東京場所の期間中。地方場所の期間中。地方場所の前の月の、20日から。そして、年末年始。
キョウコ:今は、10月の終わりですよね。
ケンゾー:ええ。2026年の十一月場所は、福岡国際センターで、11月8日から22日まで。その前の月の20日からは、見学の対象から外れます。冬巡業は、11月29日から12月20日まで。そして、年末年始。
キョウコ:ということは、今年は、ほとんど見られない?
ケンゾー:そうなんです。今年の残りに、東京の部屋で見学できる日は、かなり限られます。だからこそ、今は準備の時期です。来年の一月場所は、2027年1月10日から24日まで。予定を立てる前に、部屋やツアーが公開している日程を、必ず確かめてください。
キョウコ:予約しないで、部屋の前まで行ってみるのは、だめですか?
ケンゾー:やめておきましょう。日本政府観光局も、思い立って気軽に訪ねることは勧められない、としています。見学には、部屋の許可がいります。ふつうは、部屋が公開している見学の決まりか、ツアーを通じて許可を得ます。
ケンゾー:それから、2026年の4月には、日本相撲協会が、旅行代理店と組んだ稽古見学ツアーを控えるよう、各部屋に伝えた、という報道もありました。ただ、協会の公式サイトに、その告知は見当たりませんでした。
キョウコ:報道はあるけれど、公式には、確かめられていない。
ケンゾー:そのとおりです。なので、以前より、ツアーは少なく、中止も起こりやすい、と考えておくのが無難ですね。
キョウコ:じゃあ、今、確かめられている入口は?
ケンゾー:記事の時点で、大きく3つです。ひとつめは、見学を公開している部屋。中央区日本橋浜町の荒汐部屋は、公式サイトで、毎日の稽古を、無料、予約なしで、外から窓越しに見られる、と案内しています。
キョウコ:窓越しに! それなら、気軽に行けそう。
ケンゾー:ただし、決まりがあります。稽古は急に休みになることがあるので、電話で問い合わせずに、サイトの稽古カレンダーを確かめる。静かに見る。フラッシュは使わない。外で飲み食いしない。近所の家の階段に、座り込まない。
キョウコ:ご近所の暮らしも、守るんですね。
ケンゾー:ええ。ふたつめは、区の観光協会のツアー。中央区観光協会は、部屋の中の席から見学する、ガイド付きのツアーを扱っていて、ガラス越しに、イヤホンで解説が聞けます。11歳未満は参加できず、申し込みは7日前まで。墨田区観光協会も、英語ガイド付きのツアーを募集したことがありますが、記事の時点では、受付中のプランはありませんでした。
ケンゾー:みっつめは、日本相撲協会が、自ら公開する稽古です。2026年の5月1日には、国技館の本土俵での、横綱審議委員会の稽古総見が、無料で一般に公開されました。
キョウコ:国技館の土俵で、横綱の稽古を!
ケンゾー:巡業も、一日の始まりは早朝の稽古です。協会の発表は、こまめに見ておくといいですね。
キョウコ:では、見学のマナーを教えてください。
ケンゾー:まず、しゃべらない。私語は控えて、話すとしても、ささやき声で。稽古中の力士に、話しかけてはいけません。
ケンゾー:座るのは床です。椅子はありません。墨田区観光協会のツアーでは、あぐら、正座、体育座りはいいけれど、足を前に投げ出すのはだめ、とされています。
キョウコ:足を投げ出すのは、どうして、だめなんでしょう?
ケンゾー:理由は、案内には書かれていません。ただ、目の前で、体をぶつけ合って鍛えている人たちがいる。そこに足の裏を向けて、くつろいだ姿で座るのは、どう見えるか。そう考えると、わかる気がします。
キョウコ:見せてもらう側の、礼なんですね。
ケンゾー:まさに。撮影は、フラッシュは、どこでも禁止。ツアーによっては、動画もだめで、写真もシャッター音を消すよう求めています。決まりは部屋やツアーで違うので、カメラを構える前に、確かめてください。
ケンゾー:ほかにも、部屋の中で飲み食いしない。入るときに、帽子とサングラスを外す。トイレは、入る前に済ませておく。稽古中は席を立てませんし、一度出ると、もう入れないツアーもあります。
キョウコ:服装は?
ケンゾー:ビーチサンダル、ショートパンツ、露出の多い服はだめ。香水も控えます。ジーンズは構わない、とされています。
キョウコ:あと、気になっていたんです。見学のあとに、部屋でちゃんこ鍋を、いただけたりは?
ケンゾー:ふつうは、いただけません。ちゃんこは、力士自身の食事なんです。もともとは鍋料理を指す言葉でしたが、今では、相撲部屋の食事すべてを、ちゃんこと呼ぶようになりました。
ケンゾー:作るのは、下の地位の力士たちで、交代で受け持つ、ちゃんこ当番です。部屋のちゃんこは、鶏ガラのスープに、しょうゆと砂糖で味をつけた、ソップ炊きが多いそうですよ。
キョウコ:お腹がすいてきました。
ケンゾー:それなら、両国のちゃんこのお店へ。墨田区観光協会は、両国ちゃんこマップも公開しています。
ケンゾー:国技館の中の相撲博物館は、平日の10時から16時半まで、無料で見学できます。最後に入れるのは16時。ただ、東京場所の期間中は、大相撲の観覧券が必要です。
キョウコ:今日の話を聞いて、思ったんです。朝稽古を見るって、ショーを見ることじゃなくて、誰かの毎朝に、そっと、お邪魔させてもらうことなんですね。
ケンゾー:いい言葉ですね。最後に、明日できる小さなことを、ひとつ。日本相撲協会の、本場所と巡業の日程を開いて、カレンダーに書き込んでみてください。見られない日がわかると、見られる日が、見えてきます。
キョウコ:わたしは、来年のカレンダーに、場所と巡業を書き込んで、空いている朝を探してみます。そのあいだに、床に正座で、静かに座る練習も。
ケンゾー:足を、前に投げ出さずに。
キョウコ:はい!
ケンゾー:部屋ごとの見学の入口、日程の表、マナーの出典は、J-Times の記事、相撲部屋の朝稽古を見学するには、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回もお楽しみに。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
第4回 九谷焼・備前焼・益子焼、どう違う? — 器の「表面」を見れば、物語が読める
台本を読む
キョウコ:ねえケンゾーさん。実家の食器棚に、ずっしり重たい茶色の湯のみがあるんです。母は、これはいい焼き物よ、って言うんですけど、何焼きなのか、わたし、ぜんぜんわからなくて。
ケンゾー:それは、いい入口ですね。じつは焼き物は、表面をよく見ると、どこで、どう生まれたかが、だいたい読めるんです。
キョウコ:表面に、書いてあるんですか?
ケンゾー:文字ではなく、色と、土と、炎の跡で。今日は、それをいっしょにひもといていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、国や産地の組合の公式の情報で確かめたものです。
ケンゾー:第4回の問いは、これです。九谷焼、備前焼、益子焼。名前は聞くけれど、いったい、どう違うのか。
キョウコ:3つとも、有名ですよね。
ケンゾー:どれも、国の伝統的工芸品です。でも、共通点はそこまで。先に答えを言うと、九谷は絵、備前は土肌、益子は釉薬。器の表面が、このどれなのかで、見分けられます。
キョウコ:絵、土肌、釉薬。もう覚えちゃいました。
ケンゾー:では、ひとつずつ。まず、九谷焼。石川県の磁器です。持ち味は、上絵付け。力強い線描きの上に、緑、黄、赤、紫、紺青の、五彩と呼ばれる色を、厚く盛ります。
キョウコ:色を、盛る? 塗るんじゃなくて?
ケンゾー:そうなんです。まだ色の出ていない絵具を置いて、窯の炎で発色させて、ガラスのように変える。だから九谷の色には、ぽってりとした厚みと輝きがあるんです。
キョウコ:炎で、色が生まれるんですね。
ケンゾー:始まりは、17世紀の半ば。産地の組合によると、1655年ごろ、大聖寺藩が、窯を開きました。のちに古九谷と呼ばれる器です。
ケンゾー:ところが古九谷は、わずか半世紀ほどで、途絶えてしまう。そしておよそ100年後、加賀藩の後押しで、もう一度焼かれるようになりました。これが、再興九谷です。
キョウコ:一度、消えたのに、よみがえったんですね。
ケンゾー:ええ。ちなみに、古九谷は、じつは佐賀県の有田で作られたのでは、という説もあります。石川県九谷焼美術館は、それを一説として紹介したうえで、九谷で生まれた、という立場をとっています。
キョウコ:説が分かれていることも、ちゃんと、そう言うんですね。
ケンゾー:歴史の楽しいところです。では、ふたつめ。備前焼。岡山県備前市の、伊部という土地を中心にした、焼き締めの器です。
ケンゾー:備前焼は、釉薬も、絵付けも、使いません。土と、灰と、炎だけで、色と模様が決まるんです。
キョウコ:何も塗らないで、あの色になるんですか!
ケンゾー:登り窯で、赤松の薪を燃やして、およそ1230度。窯によって違いますが、1週間から2週間ほど、薪を焚き続けます。
キョウコ:2週間も、火の番を。
ケンゾー:土は、伊部のまわりの田んぼの下から掘る、ひよせ、と呼ばれる土です。鉄分が多くて、採れる場所は、ごくわずかだそうです。
ケンゾー:そして、窯の中で偶然に生まれる変化を、窯変と呼びます。代表的なものには、名前があるんですよ。
キョウコ:聞きたいです!
ケンゾー:胡麻。薪の灰が降りかかって溶けた、つぶつぶの模様。桟切。炭に埋もれて、灰色や青みを帯びた部分。緋襷。器に巻いた藁が、赤い筋になって残ったもの。
キョウコ:次は、なんですか?
ケンゾー:牡丹餅。大きな器の上に、小さな器を載せて焼くと、その丸い形が、ぽっかりと残るんです。
キョウコ:牡丹餅! かわいい名前。
ケンゾー:同じ窯変は、ふたつとありません。だから備前焼は、一点ごとに、景色が違う。平安時代にはもう作られていて、室町時代の終わりごろから、茶人に愛されてきました。日本六古窯の一つで、2017年には、日本遺産にも認定されています。
キョウコ:あ。実家の茶色の湯のみ、もしかして。表面に、つぶつぶがあった気がします。
ケンゾー:今度、よく見てみてください。では、みっつめ。益子焼。栃木県の益子町を中心にした、厚手の陶器です。
ケンゾー:始まりは、1853年。笠間で修業した、大塚啓三郎が、益子に窯を築きました。それから長いあいだ、かめや、すり鉢、土瓶といった、台所の道具を焼いて、江戸の台所に送り出していたんです。
キョウコ:毎日の暮らしの道具、だったんですね。
ケンゾー:そこに現れたのが、濱田庄司です。1920年から、イギリスのセント・アイヴスで、バーナード・リーチとともに器を作り、1924年に帰国したあと、制作の拠点に、益子を選びました。
キョウコ:イギリスから、益子へ。
ケンゾー:濱田は、益子の陶工たちに大きな影響を与えて、食卓の器や、花を生ける器も、作られるようになりました。1955年には、人間国宝に認定されています。
ケンゾー:益子焼の表面は、柿釉、黒釉、飴釉といった、釉薬がたっぷりと流れるようにかかっていて、白化粧や、刷毛目の模様も見えます。2020年3月の時点で、町には窯元が、およそ260あるそうです。
キョウコ:こうして並べると、3つとも、目指しているものが、ぜんぜん違うんですね。
ケンゾー:そうなんです。九谷は、人の手で、色を描ききる。備前は、人が手を引いて、炎と土に任せる。益子は、毎日の暮らしに、寄り添う。
ケンゾー:どれが優れている、ということではなくて、それぞれの土地の人が、それぞれの美しさを、何百年も守ってきた。器の違いは、そのまま、暮らしかたと、心の向けかたの違いなんです。
キョウコ:器を見ることが、その土地の人と、出会うことになるんですね。
ケンゾー:では、見分けかたを、3つの手順にまとめます。ひとつ。白や青みのある地に、色の絵がはっきり描かれていたら、九谷焼かもしれない。
ケンゾー:ふたつ。釉薬がなくて、赤褐色から黒っぽい土肌に、灰の粒や、赤い筋、灰色のむらがあれば、備前焼。みっつ。厚い器に、釉薬がたっぷり流れていて、白化粧や刷毛目が見えたら、益子焼。
キョウコ:でも、それで、ぜったいに当たりますか?
ケンゾー:いい質問です。どの産地にも、いろいろな作風がありますし、今の作家さんは、産地の枠を越えた表現もします。一つの器を見極めたいときは、どの窯の、どの作家のものかを、売り手に確かめるのが、いちばん確かです。
ケンゾー:伝統的工芸品としての品なら、国の伝統マークの入った、伝統証紙が貼られていることもあります。産地の検査に合格した、という目印です。
キョウコ:証紙がなかったら、偽物?
ケンゾー:そうとは限りません。個人の作家さんの器など、証紙なしで売られている、いい器もたくさんあります。証紙がないのは、確かめるきっかけであって、偽物の証拠ではないんです。
キョウコ:よかった。じゃあ最後に、使いかたです。電子レンジとか、食洗機は?
ケンゾー:備前焼は、産地の組合によると、電子レンジも食洗機も、おおむね使えます。ただ、作家の作品によっては使えないこともある。オーブンと直火は、だめです。
ケンゾー:それから、ちょっとした楽しみかたがあります。使う直前に、器を水にくぐらせて、軽く押さえるように拭くと、色が鮮やかになるんですよ。使ったあとは、中性洗剤で洗って、しっかり乾かす。濡れたままだと、カビや、においの原因になります。
キョウコ:水にくぐらせると、色が変わるんだ。やってみたい!
ケンゾー:九谷焼は、色絵や、金を使った器が多いので、電子レンジには入れないでください。金や銀の飾りは、火花の原因になります。益子焼は、器ごとに、作り手やお店の説明に従ってくださいね。
キョウコ:産地へ行って、実際に見てみたくなりました。
ケンゾー:それなら、陶器市の時期がおすすめです。益子の陶器市は、例年、春のゴールデンウイークと、秋の11月3日前後。備前焼まつりは、秋の風物詩。九谷茶碗まつりは、毎年5月に、能美市の九谷陶芸村で開かれます。
キョウコ:益子の秋の陶器市って、もうすぐですね!
ケンゾー:例年どおりなら、ですね。今年の日程は、益子焼の組合の案内で、確かめてから出かけてください。
キョウコ:今日の話を聞いて、思ったんです。器って、ただの道具じゃなくて、その土地の、時間と、人の手と、炎の記録なんですね。
ケンゾー:いい言葉ですね。最後に、明日できる小さなことを、ひとつ。食器棚から、器をひとつ取り出して、表面を見てみてください。絵か、土肌か、釉薬か。
キョウコ:わたしは、実家の茶色の湯のみを、つぶつぶを探しながら、じっくり見てみます。胡麻かな、桟切かな。
ケンゾー:答え合わせは、お母さんと、ぜひ。
キョウコ:はい!
ケンゾー:3つの焼き物の比べ表、写真、手入れの詳しい出典は、J-Times の記事、九谷焼、備前焼、益子焼の違いとは、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回もお楽しみに。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
第3回 日本の祭りに参加するには — 見るだけじゃなく、祭りの「輪」に入るには?
台本を読む
キョウコ:ねえケンゾーさん。わたし、お祭りって、いつも沿道から見るばかりなんです。神輿の担ぎ手さんたち、楽しそうだなあって。
ケンゾー:わかります。でも内側の人にとって、祭りは、1年がかりの寄り合いで、そろいの半纏で、自分たちの町の神さまを、自分たちの手でお連れする時間なんです。
キョウコ:内側に入る。わたしにも、できるんでしょうか?
ケンゾー:今日は、それをいっしょにひもといていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、神社本庁や神社、区の公式の情報で確かめたものです。
ケンゾー:第3回の問いは、これです。見るだけじゃなく、祭りの輪に入るには、どうすればいいのか。
キョウコ:神輿を担ぐ。盆踊りの輪に入る。お手伝いをする。いろいろありそうですね。
ケンゾー:まず、祭りとは何か。神社本庁は、神社は神さまをお招きする場所で、その神さまへのご奉仕こそが、お祭りだ、と説明しています。
キョウコ:ご奉仕。イベントというより、神さまのための時間、なんですね。
ケンゾー:そうなんです。神輿が町をめぐるお祭りは、渡御祭といいます。神さまが神輿にお遷りになって、氏子の手で、氏子の地域をめぐられる。これで神と人とが一体となり、人々は活力を取り戻す、と信じられているんです。
キョウコ:氏子って、よく聞くんですけど、どういう人のことですか?
ケンゾー:神社本庁によると、その神社のまわりに住む人のことです。引っ越せば、氏神さまも、新しい地域の神社になる。
キョウコ:じゃあ、生まれじゃなくて、今どこに住んでいるか、なんですね。
ケンゾー:そうなります。お祭りのあとの直会では、神さまにお供えした御饌御酒を、神職と参列した人がいただきます。神社本庁は、これを神人共食と呼んでいます。
キョウコ:神さまと同じものを、いただく。だから祭りは、神さまと人が、共に過ごす時間なんですね。
ケンゾー:そのとおりです。では、その祭りを担っているのは誰か。答えは、氏子、そして町会です。
ケンゾー:浅草神社の三社祭では、氏子の44の町を中心に、町内の神輿およそ100基が、境内に集まります。2012年の nippon.com の特集によると、どの町も平等に、神社の神輿を担げるように、1年がかりの会議で予定を組むそうです。
キョウコ:1年がかり! お祭りの日だけじゃないんだ。
ケンゾー:だから祭りには、一般向けの受付窓口が、ないんです。入口は、町会か、町会が迎え入れたグループです。
キョウコ:じゃあ、地元の人じゃなかったり、外国から来た人だったりすると、担げないんですか?
ケンゾー:決めるのは、国籍ではありません。J-Times が調べた公式の規約に、国籍の定めはないんです。大事なのは、町会や担ぎ手の会に迎え入れられていて、その決まりを守れるか。
ケンゾー:近年は、女性も担ぐ神輿があります。助っ人の担ぎ手がいないと、祭りが成り立たない地域も多いそうです。
キョウコ:人手が必要な町は、多いんですね!
ケンゾー:ええ。ただ、誰かの紹介で来て、チームの決まりに従うことが前提です。道は、大きく3つあります。
ケンゾー:ひとつめは、住んでいる地域から。新宿区だけでも、およそ200の町会や自治会があって、区は、地域の掲示板で行事の情報を確かめてください、と呼びかけています。
キョウコ:掲示板! 毎日通る道にも、ありますね。
ケンゾー:ふたつめは、知り合いや職場の縁。三社祭の担ぎ手には、町会に友だちがいるから、半纏のデザインが好きだから、と、さまざまな理由で集まる人がいるそうです。
キョウコ:半纏のデザインが好き。いい理由ですね。
ケンゾー:みっつめは、体験会。2025年の9月14日には、墨田区向島の町会が、外部の会社と組んで、神輿体験を開きました。参加費は、半纏のレンタル込みで1,500円。ただ、2026年の開催は見つからなかったので、形の一例として聞いてください。
キョウコ:お祭りの日に、通りで神輿に出会って、飛び入りで担ぐのは?
ケンゾー:それは、やめておきましょう。まわりの担ぎ手は全員、順路と時間を決めて動いているチームの一員です。
ケンゾー:そして、神輿は、神さまの乗り物です。浅草神社によると、神輿を荒々しく揺さぶるのは、魂振りといって、神さまの霊威を高めるため、と信じられています。
キョウコ:あの揺れ、神さまのためだったんですか!
ケンゾー:荒々しさそのものが、神事の一部なんです。だからこそ決まりは厳しい。2023年の三社祭の参加規約は、神輿の上には絶対に乗らない。町会の半纏を、いつも着る。お酒を飲んで担がない。時間と順路を守る。警察や消防の指示に従う、と定めています。
キョウコ:お酒も、だめなんですね。
ケンゾー:直会で御神酒をいただくのは、神さまの恵みを受けることでもあります。禁じられているのは、飲んで、担ぐこと。神輿は重くて、人も多い。酔った一人が、同じ棒の下にいる全員を、危険にさらしてしまうんです。
キョウコ:神さまの乗り物で、みんなの安全も預かっている。重みが違いますね。
ケンゾー:担ぐ前には、その神輿の神さまの神社へ、お参りしておくのが礼儀です。服装は、チームの指定どおりに。多くは、チームの半纏、ゴム底の地下足袋、鉢巻です。
ケンゾー:半纏には、町名や紋が入っています。それを着るのは、その日一日、そのチームを背負うということ。どこかで買った法被を着て行けば担げる、というものではないんです。
キョウコ:町の名前を背負う。かっこいいなあ。でも、わたしは、まず盆踊りから入りたいです。
ケンゾー:盆踊りなら、誰でも輪に入れる会場が多いですよ。お盆に、祖先の霊を迎えて送る時期の輪踊りで、櫓のまわりを回る形が多い。根っこは仏教の側にあって、お寺でも、神社でも、公園でも開かれます。
キョウコ:東京だと、どこで踊れますか?
ケンゾー:たとえば中野駅前大盆踊り大会。2026年は8月1日と2日で、入場無料、民謡を生演奏で踊れる、と案内されていました。日比谷公園の丸の内音頭大盆踊り大会は、飛び入り歓迎、とうたっています。ただ、2026年は中止でした。
キョウコ:飛び入り歓迎! ちょっと想像してみます。提灯の灯りの下、櫓をかこむ輪の、いちばん外側に、そっと入る。前の人の手の動きを、見よう見まねで。
ケンゾー:まさに、それがおすすめの入り方です。初めてなら、輪の外側に入って、前の人の手足をまねる。
キョウコ:1周目はぎこちなくても、2周目には、となりの人と目が合って、にっこりしたりして。
ケンゾー:輪の中にいるのは、舞台の演者ではなく、季節をいっしょに踊る、近所の人たちですからね。
キョウコ:お手伝いがしたい人は?
ケンゾー:多くは、町会の一員として、ですね。町会に入れば、最初に頼まれるのは、おそらく準備や片付け、沿道の整理。それが、チームに顔を覚えてもらう道でもあります。
ケンゾー:東京の神輿の季節は、春から夏です。10月の終わりの今は、来年に向けて、人とつながり始める時期だと考えるといいですね。
キョウコ:今日の話を聞いて、思ったんです。祭りの輪に入るって、その町の、神さまと人の輪に入ることなんですね。
ケンゾー:いい言葉ですね。最後に、明日できる小さなことを、ひとつ。通勤や買い物の道すがら、近所の掲示板を、ちょっとのぞいてみてください。町会の行事のお知らせが、貼ってあるかもしれません。
キョウコ:わたしは、駅までの道の掲示板を見てみます! そして来年の夏は、盆踊りの輪の、いちばん外側から。
ケンゾー:前の人の手足を、よく見て。
キョウコ:はい!
ケンゾー:神輿の決まり、服装、東京での入口、写真と出典は、J-Times の記事、日本の祭りに参加するには、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回もお楽しみに。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
第2回 わびさび — 不完全なものを、なぜ美しいと感じるの?
台本を読む
キョウコ:ねえケンゾーさん。毎朝使ってるマグカップのふちが、ちょっと欠けちゃったんです。捨てようか迷ってたら、友だちに「それ、わびさびじゃない?」って言われて。わびさびって、結局なんなんですか?
ケンゾー:欠けたマグカップ。今日の話に、ぴったりの入り口ですね。
キョウコ:ほんとですか。じゃあ今日、捨てるかどうか決めます。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、茶道の家元の資料や、辞典などで確かめたものです。
ケンゾー:第2回の問いは、これです。不完全なものを、なぜ美しいと感じるのか。
キョウコ:わびさびって、古くて、地味で、しぶい、みたいなイメージです。でも、わびとさびの違いは、たぶん答えられない。
ケンゾー:そこで詰まる人は、多いんです。答えから言うと、わびさびは、簡素で足りないもの、古びて静かなものに美を見る、日本の美意識。茶の湯で育った「わび」と、俳諧で育った「さび」を合わせた呼び名です。
キョウコ:え、もとは、ふたつの言葉だったんですか!
ケンゾー:そうなんです。辞典をまとめて引けるコトバンクでも、わびと、さびは別々の項目で、わびさびという項目はありません。会話でのまとめ言葉、なんですね。
キョウコ:じゃあ、それぞれ、どういう意味なんですか?
ケンゾー:覚えやすい訳があります。英語のスタンフォード哲学百科事典は、わびを、抑えた、簡素な美。さびを、素朴な古色、と訳しています。つまり、わびは、足りないことを、それで良しとする美。さびは、年月が、ものの表面や気配にあたえる深みです。
キョウコ:足りないのが、わび。年月が、さび。それなら覚えられそう!
ケンゾー:では、なぜそれを美しいと感じるのか。ヒントは、言葉の由来です。わびは、わぶ、という動詞から。気落ちする、つらいと思う、落ちぶれる。根っこにあるのは、思い通りにならない、つらさです。
キョウコ:つらさ? 美しいどころか、正反対じゃないですか。
ケンゾー:さびは、さぶ、から。古くなる、色あせる。生命力が衰えていくさま、です。万葉集の、わびし、も、恋が実らない苦しみの言葉でした。
キョウコ:恋が実らない苦しみ。どっちも、もとは悲しい言葉なんですね。
ケンゾー:そう。その悲しい言葉が、茶の湯や俳諧の中で、美をたたえる言葉に変わった。表千家は、そこに日本人独自の美意識がある、と言います。
キョウコ:思い通りにならないものを、きれいだって思えるようになった、ってことですか?
ケンゾー:わたしは、そう受け取っています。目をそらさずに見つめたら、そこに静かな美しさがあった。では、茶の湯のわびを育てた、3人の茶人の話を。
ケンゾー:その前のお茶は、むしろ、にぎやかな遊びでした。産地の違うお茶を飲み当てて、賞品をかける闘茶。唐物と呼ばれた豪華な道具を飾り立てる、宴会の茶の湯もありました。
キョウコ:お茶で、当てっこ大会。今のイメージと、ぜんぜん違う!
ケンゾー:でしょう。そこに現れたのが、わび茶の祖とされる、村田珠光です。珠光は、こんな言葉を残したと伝えられています。月も雲間のなきは、嫌にて候。
キョウコ:雲のない月は、いや、ってことですか?
ケンゾー:皓々と輝く満月より、雲に見え隠れする月が美しい。ただ、珠光自身は、まだ「わび」という言葉は使っていなかった、という指摘もあります。
キョウコ:でも、その気持ち、わかるかも。まんまるの月より、雲がかかってるほうが、なぜか、ずっと見ていたくなる。
ケンゾー:見えないところを、こちらの心が補う。そんな楽しみ方、かもしれません。
ケンゾー:次は、武野紹鴎。堺の豊かな町衆で、若いころは連歌師をめざした人です。紹鴎は、わびを、正直に慎しみ深く、おごらぬ様、と言い表しました。
キョウコ:正直で、つつしみ深くて、いばらない。人柄みたいですね。
ケンゾー:そして、紹鴎のわびの心を表す歌として挙げられるのが、藤原定家のこの歌です。見渡せば、花も紅葉も、なかりけり。浦のとまやの、秋の夕暮。
キョウコ:花も紅葉もない。海辺の小屋の、秋の夕方。本当に、何もない。
ケンゾー:何もないことの美、です。秋の夕方、窓から差しこむ、少し弱くなった光。さびしいのに、きれいだな、と感じたことはありませんか。
キョウコ:あります。部屋がだんだんオレンジ色になって、なんだか胸が、きゅっとする。あれも、わびなのかな。
ケンゾー:そして3人目が、千利休。19歳で紹鴎に茶を学び始め、わび茶を大成して、ひとつの道にまで高めた人です。織田信長、豊臣秀吉に仕え、のちに秀吉から切腹を命じられました。
ケンゾー:長次郎の楽茶碗や、竹の茶杓、日常の道具の見立てにも、わびの美は表れました。利休のわびを表すと伝わるのが、藤原家隆のこの歌です。花をのみ、待つらむ人に、山里の、雪間の草の、春を見せばや。
キョウコ:雪間の草?
ケンゾー:花ばかり待つ人に、雪のあいだから顔を出す草の、春を見せたい。紹鴎が、何もないことを示したとすれば、利休は、何もない中に芽吹く力を示した、と言えます。
キョウコ:何もない、で終わらないんだ。そこから、ちゃんと何かが出てくる。
キョウコ:じゃあ、さびは? 古いもの、さびしいもの、ですよね。
ケンゾー:そう思いますよね。ところが、さびを理想にした松尾芭蕉の一門は、少し違います。門弟の向井去来は、師の教えを書き留めた去来抄で、こう答えています。さびは句の色なり。閑寂なるをいふにあらず。
キョウコ:色? 静かでさびしい、って意味じゃないんですか!
ケンゾー:たとえば、年をとった人が、甲冑を着て戦場で働いても、錦を着て宴の席にいても、老いの姿が、にじみ出る。にぎやかな句にも、静かな句にも、さびはある、と。
キョウコ:何を着ても、隠しきれないもの。その人が重ねてきた、年月の色、みたいな。
ケンゾー:まさに。芭蕉の一門にとって、さびは、古い物やさびしい場所という題材ではなく、詠む人の心が、句ににじむ色だったんです。
キョウコ:でも、海外だと Wabi-Sabi って、不完全の美、って紹介されてますよね。
ケンゾー:広まったきっかけは、1994年、アメリカのレナード・コーレンの本です。コーレンは、不完全で、はかなく、未完成なものの美、と定義しました。
ケンゾー:ただ、日本の資料が強調するのは、足りなさ、慎み、年月の深み。不完全さも含まれますが、真ん中ではないんです。
キョウコ:じゃあ、今日の問い。不完全なものを、なぜ美しいと感じるのか。問いの立て方が、ちょっと、ずれてたんですか?
ケンゾー:鋭いですね。欠けているから美しい、というより、足りない中の簡素さや、年月がにじませる深みを、美しいと感じてきた。その根っこには、つらさや衰えを表す、悲しい言葉があったんです。
キョウコ:あ、でも、マグカップは? 欠けたものは、わびさびじゃない?
ケンゾー:スタンフォード哲学百科事典は、わびの美意識では、きれいに繕われた割れた道具が、無傷のものより高く評価されることもある、と書いています。ただ、よく言われる金継ぎも、記事で使った日本の資料では、わびさびとは定義されていません。今の時代の連想として、楽しみましょう。
キョウコ:欠けたから、じゃなくて。毎朝、何年も使ってきた、あの色。それが、わたしにとっての、さびなのかもしれない。
ケンゾー:いい言葉ですね。聞いている皆さんにも、ひとつ問いかけを。あなたの家で、いちばん長く使っているものは、なんですか?
ケンゾー:明日、それをひとつだけ、何も置いていない机に置いて、1分だけ眺めてみてください。新品とくらべずに、年月がつけた色を、探してみる。窓から秋の光が差しこむ時間なら、なおいいですね。
キョウコ:わたしは、欠けたマグカップで、明日の朝、お茶を一杯いれます。捨てるのは、やめました!
ケンゾー:それは、立派な茶の湯のはじまりですね。
キョウコ:大げさです。
ケンゾー:3人の茶人の年表や、よくある俗説、写真と出典は、J-Times の記事、わびさびとは、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回、第3回は、日本の祭りに参加するには。神輿や盆踊りの輪に、どうやって加わるのか。いっしょにひもときましょう。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
第1回 酉の市 — なぜ熊手で「福をかき込む」の?
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キョウコ:ねえケンゾーさん。11月になると、浅草のほうで、夜中に「よーっ、パン!」って手をたたく音がするって聞いたんですけど。あれ、なんですか?
ケンゾー:それはきっと、酉の市の手締めですね。熊手がひとつ売れるたびに、お店の人とお客さんがいっしょに手を打つんです。
キョウコ:売れるたびに? にぎやかですね!
ケンゾー:にぎやかですよ。今日はその酉の市を、いっしょにひもといていきましょう。
ケンゾー:J-Times のポッドキャスト、和のこころ、ひもとく。案内役のケンゾーです。
キョウコ:聞き手のキョウコです。この番組の声は、AIで作っています。お話の中身は、J-Times 編集部が、神社やお寺の公式の情報で確かめたものです。
ケンゾー:第1回の問いは、これです。酉の市で、なぜみんな熊手を買うのか。
キョウコ:熊手って、落ち葉を集める、あの竹の道具ですよね。それを、お祭りで買うんですか?
ケンゾー:そうなんです。まず、酉の市が何かからお話ししますね。酉の市は、11月の酉の日に、「おおとり」という名前の神社などで開かれるお祭りと、そこに立つ市のことです。願うのは、開運招福と商売繁盛。
キョウコ:酉の日って、どうやって決まるんですか?
ケンゾー:日にちに、十二支を順番に当てはめていくんです。ね、うし、とら、と数えていって、とりに当たる日が酉の日。12日おきに巡ってくるので、11月には、年によって2回か3回あります。
キョウコ:じゃあ、今年は?
ケンゾー:2026年は、一の酉が11月7日の土曜日。二の酉が11月19日の木曜日です。今年は三の酉はありません。
キョウコ:7日、土曜日なんですね。メモしました!
ケンゾー:東京でいちばん大きいのは、浅草の鷲神社と、となりの長國寺です。鷲神社では、午前0時の一番太鼓を合図に始まって、まる一日、24時間開かれます。
キョウコ:24時間! 夜中でも行けるんですか。
ケンゾー:行けます。目黒の大鳥神社は朝8時から夜10時まで。新宿の花園神社は、前の晩の前夜祭からにぎわって、露店はおよそ260も並びます。
キョウコ:新宿なら、仕事帰りにも寄れそう。
ケンゾー:ただ、花園神社は、混んでいるときは夕方6時ごろから境内に入るのを止めることがある、と神社が知らせています。ゆっくり見たいなら、早めの時間がおすすめです。
キョウコ:なるほど。で、そもそも、どうして酉の日に、熊手なんですか?
ケンゾー:始まりの話は、いくつかあります。浅草の鷲神社に伝わる話では、日本武尊が戦いの帰りに、社の前の松に熊手をかけて、戦いに勝ったことを祝ったそうです。その日が11月の酉の日だった、と。
キョウコ:日本武尊! 神話の英雄ですよね。
ケンゾー:ええ。ほかにも、今の足立区花畑の、村の収穫のお祭りが始まりだという話もあります。氏子さんが鶏を奉納して、お祭りが終わると、浅草の観音さまの前に放したんだそうです。
キョウコ:鶏を放す。酉の市の「とり」は、そこから来ているのかな。
ケンゾー:つながりを感じますよね。江戸時代の中ごろには、もう大きな年中行事になっていて、俳人の宝井其角は、こう詠んでいます。春を待つ、ことのはじめや、酉の市。
キョウコ:春を待つ、ことのはじめ。お正月を迎える準備の、いちばん最初のお祭り、ってことですか?
ケンゾー:そうなんです。年の瀬に向かう最初のお祭り。だから、来年の福をかき集める熊手なんですね。熊手は、福をかき込む縁起物。目黒の大鳥神社は、家の中に宝を掃き込む、かき込むという意味だと説明しています。
キョウコ:かき込む! 道具の形と、願いがそのまま重なってるんですね。
ケンゾー:日本の縁起物には、こういうものが多いんです。形や言葉に、願いを重ねる。目に見えるものに託すと、願いを毎日思い出せますから。
キョウコ:毎日、玄関で見るたびに、今年もがんばろう、って思える。それ、いいですね。
キョウコ:でも、ケンゾーさん。熊手って、大きいのは高いんでしょう? わたし、どうやって買えばいいか、ぜんぜんわからなくて。
ケンゾー:大丈夫です。鷲神社が、買い方の順番を紹介しているので、それに沿っていきましょう。まず、先にお参りをします。
キョウコ:お買い物の前に、お参り。
ケンゾー:はい。それから、境内をぐるっとひと回りして、気に入った形と、予算を決めます。最初は、小さい熊手から。会社や家族が栄えるのにあわせて、毎年少しずつ大きくしていく、と言われています。
キョウコ:毎年、大きくしていくんですか! 成長の記録みたい。
ケンゾー:本当にそうですね。値段は、小さいものなら1,000円から。大きいものだと、何十万円もするものがあるそうです。
キョウコ:何十万円。じゃあ、わたしは1,000円のからにします。
ケンゾー:それがいちばんです。それから、酉の市ならではの作法があって。お店の人とのやりとりを楽しんで、昔は、値切ってもらった分を、ご祝儀としてお店に置いていくのが、粋な買い方とされたそうです。
キョウコ:え、値切ったのに、その分を置いていくんですか?
ケンゾー:そう。値切るのは、お金を浮かせるためというより、やりとりそのものを楽しむため。そして、浮いた分は、お店の福として返す。ただ、長國寺は、ご祝儀は慣わしで、決まりではない、とも書いています。今は、値段をはっきり示すお店もありますから、その場に合わせて、で大丈夫です。
キョウコ:損をしない、じゃなくて、気持ちよく分け合う。なんだか、日本らしいですね。
ケンゾー:そして、買うことが決まったら、手締めです。お店の人の音頭で、いっしょに手を打つ。商いがまとまったことを祝って、家や会社の弥栄、つまり、ますますの繁栄を祈るんです。
キョウコ:最初の、よーっ、パン、ですね! あれ、お客さんも、いっしょにやっていいんですか?
ケンゾー:もちろん。まわりで聞いていた人も、思わず笑顔になる音です。
キョウコ:去年の熊手は、どうするんですか? 毎年買ったら、家が熊手だらけになっちゃう。
ケンゾー:前の年の熊手は、酉の市の会場にある、熊手の納め所に納めます。長國寺は、新しい熊手を求めに来るときに持ってきてください、と案内しています。
キョウコ:飾る場所は?
ケンゾー:長國寺の案内では、玄関に、入口に向けて、少し高いところに飾るのがいちばん、とされています。
キョウコ:あと、三の酉がある年は火事が多い、って聞いたことがあるんですけど。
ケンゾー:そう言い伝えられてきました。でも、東京消防庁は、火事が多くなるという確かな根拠はない、としています。寒くなって火を使う季節だから気をつけよう、という戒めだった、という説もあります。
キョウコ:言い伝えは、言い伝えとして。でも、火の用心は、大事ですね。
ケンゾー:そのとおりです。ちなみに今年は、三の酉はありません。
キョウコ:今日の話を聞いて、思ったんです。熊手を買うって、来年の自分に、福をかき込む約束をすることなのかなって。
ケンゾー:いい言葉ですね。最後に、聞いている皆さんにも、ひとつ問いかけを。来年、あなたがかき込みたい福は、なんですか? 仕事、家族、健康、新しい出会い。小さな熊手ひとつに、その願いを託してみるのも、いいかもしれません。
キョウコ:わたしは、11月7日の土曜日、早めの時間に、1,000円の熊手から始めてみます!
ケンゾー:手締めも、忘れずに。
キョウコ:はい!
ケンゾー:浅草・目黒・新宿などの会場と時間、熊手の種類、写真と出典は、J-Times の記事、酉の市とは、にまとめています。番組の説明欄から読めます。
キョウコ:次回は、わびさび。不完全なものを、なぜ美しいと感じるのか。いっしょにひもときましょう。
ケンゾー:和のこころ、ひもとく。お相手は、ケンゾーと、
キョウコ:キョウコでした。またね。
