J-Times Editorial
Culture Desk
お辞儀は、頭を下げる深さで「ありがとう」「すみません」「よろしくお願いします」の気持ちの強さを伝える日本のあいさつです。会釈・敬礼・最敬礼の三つの違いと、その成り立ちをやさしく解説します。
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お辞儀は、頭を下げる深さで気持ちの強さを伝える日本のあいさつです。軽い会釈は約15度、ふつうのあいさつは約30度、深いお礼やおわびは約45度が目安です。旅行で日本に来た人は、軽く頭を下げるだけで十分に気持ちが伝わります。
結局、何を覚えておけばいい?
- お辞儀は「こんにちは」だけではありません。 感謝・おわび・お願いも、頭を下げる深さで伝えます。
- 目安は三つ。 会釈(約15度)、敬礼(約30度)、最敬礼(約45度)。
- 完璧でなくて大丈夫。 角度よりも、相手を大切に思う気持ちのほうが伝わります。
お辞儀はどこから来たの?
頭と目線を下げると、人は相手に対して無防備になります。だから頭を下げることは「あなたを傷つけるつもりはありません」というしるしになります。これは世界のあちこちにある身ぶりですが、日本ではそれが、毎日のあいさつの形として細かく整えられてきました。
形を整えたのは、主に二つの流れです。
- 仏教の伝来(6世紀)。 仏教は、朝鮮半島の百済の王から欽明天皇へ仏像が贈られたことから始まったと伝えられています。年は552年とも538年ともいわれます(京都国立博物館の解説)。仏や師に頭を下げる作法も、このころ大陸から伝わりました。
- 武家の礼法。 武士の社会では、座り方・立ち方・お辞儀のしかたが「型」として決められました。代表が 小笠原流礼法(おがさわらりゅうれいほう。武家の作法を伝える流派)で、宗家の公式サイトによると約700年前に武家社会で確立し、今も受け継がれています。
いつから今のような「立ってするお辞儀」になったの?

1880年ごろの日本で撮られた、お辞儀を交わす二人の女性(手彩色写真・撮影者不詳)。写真: パブリックドメイン/Wikimedia Commons
| 時代 | できごと |
|---|---|
| 6世紀 | 仏教が伝わり、仏や師に頭を下げる作法が入ってくる |
| 682年 | 天武天皇が「ひざまずく礼や、はうような礼をやめ、難波の朝廷の立礼(立ってする礼)を使え」と命じる(日本書紀 巻第二十九) |
| 武家の時代 | 小笠原流などの礼法が、お辞儀を「型」として整える |
| 明治以降 | 西洋の握手が入ってくるが、お辞儀はあいさつの基本として残る |
| 今 | 学校の式典や会社の研修、自治体の生活ガイドでも、お辞儀のしかたが教えられている |
畳の上で正座をして行うお辞儀は 座礼(ざれい)、立って行うお辞儀は 立礼(りつれい)と呼びます。畳の部屋に上がるときの作法は「なぜ日本人は家で靴を脱ぐのか」で詳しく紹介しています。
実際、どのくらい頭を下げればいい?

図: J-Times 作成。角度は江戸川区「日本のあいさつ」の目安によります。
| お辞儀 | 角度の目安 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 会釈(えしゃく) | 約15度 | 道や廊下ですれ違うとき、軽いお礼 |
| 敬礼(けいれい) | 約30度 | あいさつ・会議など、いちばんよく使う |
| 最敬礼(さいけいれい) | 約45度 | 深い感謝や、心からのおわび |
東京都江戸川区が外国から来た住民向けに出している生活ガイドでも、この三つが「お辞儀の種類」として紹介されています。
きれいに見せるコツは次のとおりです。
- 背すじをのばし、腰から曲げる。 首だけを曲げると、雑な印象になります。
- あらたまった場では、話しながら頭を下げない。 言葉を言ってから頭を下げる(または、頭を下げてから話す)と落ち着いて見えます。
- 立場がちがうときは、下の立場の人が少し深く、少し長く頭を下げるのがふつうです。
- 電話中に頭を下げる人もいます。 相手に見えなくても、体が覚えている習慣です。

鹿児島県鹿屋市の小学校の閉校式(2026年3月)。式典では深いお辞儀が今もふつうに見られます。写真: Sanjo(CC BY-SA 4.0)/Wikimedia Commons
神社でも、お辞儀は大切な作法です。参拝の「二拝二拍手一拝」の手順は「日本の神社の正しい参拝方法」をご覧ください。
よくある勘違いは?
- 「外国人も完璧にお辞儀をしなければならない」 そんなことはありません。小さくても気持ちのこもった会釈で十分です。
- 「手を振るのと同じ、ただのあいさつ」 お辞儀は、おわび・お礼・お願い・お祝いの気持ちも運びます。どれなのかは場面で分かります。おわびの言葉については「すみませんで始まる不思議な会話」も参考になります。
- 「お辞儀はなくなりつつある」 仕事では握手も増えましたが、お辞儀はなくなっていません。握手と軽いお辞儀を一緒にすることもよくあります。
- 「深ければ深いほどよい」 気軽な場面で深すぎるお辞儀をすると、かえって不自然に見えます。場面に合った深さを選びましょう。
よくある質問
Q. 日本の人には、お辞儀と握手のどちらをすればいい? A. 相手に合わせれば大丈夫です。仕事の場では、軽いお辞儀と握手を一緒にすることも多いです。迷ったら軽い会釈をしましょう。
Q. どのくらい深く頭を下げればいい? A. 旅行中なら、約15〜30度でほとんどの場面に足ります。約45度の深いお辞儀は、心からのお礼やおわびのときに使います。
Q. 日本の人は、謝るときにもお辞儀をするの? A. はい。おわびのときは、ふだんより深く、長く頭を下げます。言葉と同じくらい大切な意味を持ちます。
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出典
- 京都国立博物館「博物館ディクショナリー No.243」(仏教の伝来・552年/538年説): https://www.kyohaku.go.jp/jp/learn/assets/home/dictio/pdf/dic_243.pdf
- 『日本書紀』巻第二十九・天武天皇十一年九月条(跪礼・匍匐礼をやめ立礼を用いる): https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9B%B8%E7%B4%80/%E5%8D%B7%E7%AC%AC%E5%BB%BF%E4%B9%9D
- 小笠原流礼法宗家本部(約700年前に武家社会で確立): https://www.ogasawararyu-reihou.com/
- 江戸川区「国がちがうと生活する決まりもちがう」(会釈15度・敬礼30度・最敬礼45度): https://www.city.edogawa.tokyo.jp/foreign/column/bunka/kimari.html
- カバー写真: Maya-Anaïs Yataghène「Japan - Tokyo」(2012年11月撮影、CC BY 2.0)/Wikimedia Commons
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