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なぜ日本人はマスクをするのか — 大正のスペインかぜ、花粉症、そして「個人の判断」へ

なぜ日本人はマスクをするのか — 大正のスペインかぜ、花粉症、そして「個人の判断」へ

1922年の内務省ポスターから、2019年の花粉症有病率42.5%、2023年3月13日の方針転換、調査で見る「周りの目」まで

作者:J-Times Editorial·2026年10月26日·1 min

J-Times Editorial

J-Times 編集部 / J-Times Editorial Team

2026年10月26日1 min8 次浏览
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日本人がマスクをする理由は、スペインかぜ以来の感染予防の習慣、国民の4割超が悩む花粉症、そして周囲への配慮や「周りに合わせる」心理の組み合わせだ。国は2023年3月13日から着用を個人の判断に委ねたが、着用は続いている。一次資料と調査で理由を分けて解説する。

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なぜ日本人はマスクをするのか

答え(2026-09-23時点):スペインかぜ以来の感染予防の習慣に、4割超が悩む花粉症と周囲への配慮が重なった結果。2023年3月13日からは個人の判断に委ねられている。

日本を訪れた人は、ほかの国ではパンデミックが過去の話になった後も、日本ではマスク姿が多いことに気づく。2月の通勤電車で、スーパーで、教室の中高生に。これを「日本は変わっている」で片づけるのはたやすい。だが理由はもっと身近で、しかも記録がよく残っている。はっきりした歴史の起点があり、非常に大きなアレルギーの問題があり、日付の決まった政府の方針転換があり、なぜ着け続けるのかを尋ねた調査もある。本稿ではそれを一つずつ取り上げ、どこまでが資料で言えることで、どこからが解釈なのかを明記する。

日本人はいつからマスクをするようになったのか

日本のマスクは明治初期に始まり、当初は主に粉塵よけだった。予防の習慣になったのは1918〜1921年のスペインかぜの流行時で、内務省がポスターで着用を呼びかけた。

マスクメーカーの業界団体である日本衛生材料工業連合会によると、日本のマスクの歴史は明治初期に始まる。当時のマスクは真ちゅうの金網を芯にし、布をフィルターとして取り付けたもので、主に粉塵よけに使われていた。東京の北多摩薬剤師会が運営する「おくすり博物館」の解説は、医療器具商「いわしや」が明治12年(1879年)に出した国産「呼吸器(レスピラートル)」の新聞広告を紹介している。広告は、舶来品に劣らず価格も安いとうたっていたという。

転機になったのは、スペインかぜと呼ばれるインフルエンザの世界的流行だった。内務省衛生局は1922年(大正11年)3月に、詳しい公式報告書『流行性感冒』を刊行している。総務省統計研究研修所の奥積雅彦氏による統計図書館の解説によれば、同報告書は1918年8月から1921年7月までの3回の流行で、患者数23,804,673人、死亡者数388,727人を数えた。一方、同じ期間の「人口動態統計」では流行性感冒による死亡者は225,391人と少ない。解説によれば、人口動態統計では流感による死亡の多くが肺炎などの呼吸器疾患として計上されたためで、2つの数字は数えている対象が違う。

報告書には内務省が作った啓発ポスターも収められていて、国立保健医療科学院がカラーでスキャンして公開している。そのうちの一枚は混み合った電車の中を描いたものだ。咳をする男性からばい菌の雲が乗客に降りかかり、マスクをした人だけが守られている。添えられた言葉は「恐るべし『ハヤリカゼ』の『バイキン』!」「マスクをかけぬ命知らず!」。新型コロナの100年前から、国は「混んだ電車ではマスクを」と国民に呼びかけていたのである。

日本衛生材料工業連合会は、この流行をきっかけにマスクが予防品として注目されるようになったとし、その後の歩みもたどっている。1923年には内山武商店の「壽(ことぶき)マスク」が商標登録品の第1号に認定された。インフルエンザが再び猛威をふるった1934年(昭和9年)にはマスクが大流行し、「以後、インフルエンザがはやるたびに、マスクの出荷量も爆発的に増加」したという。1950年には日本初のガーゼマスクが登場し、1973年には今の主流である不織布製プリーツ型の原型の生産・販売が日本で始まった。

なぜ春になるとマスクをする人が増えるのか

花粉症の人が非常に多いからだ。環境省と政府が引用する2019年の全国調査では、花粉症の有病率は42.5%、そのうちスギ花粉症は38.8%だった。

日本衛生材料工業連合会は、1980年代からの花粉症の流行が、それまでのインフルエンザ対策に加えて、一般家庭へのマスクの普及を後押ししたとしている。花粉症の規模はよく調べられている。全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象にした「鼻アレルギーの全国疫学調査」は、1998年、2008年、2019年とほぼ10年おきに行われてきた。2019年の結果は松原篤氏らが2020年に日本耳鼻咽喉科学会の会報で報告している。内閣官房の資料は、この調査を日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会による約2万人の調査と説明している。花粉症の有病率は1998年の19.6%から、2008年に29.8%、2019年に42.5%へと上がった。スギ花粉症は2019年に38.8%で、ほぼ3人に1人にあたる。環境省の『花粉症環境保健マニュアル2022』もこの数字を載せている。2023年5月には花粉症に関する関係閣僚会議がこれを引用し、花粉症を「多くの国民を悩ませ続けている社会問題」と位置づけた。なお、この調査の対象は医師とその家族で、国民から無作為に選んだ標本ではない。この点は割り引いて読む必要がある。

環境省のマニュアルによれば、現在のスギ林の多くは植林された人工林で、スギやヒノキの花粉は春を中心に飛ぶ。同じマニュアルはマスクの着用を勧めていて、その根拠として実験結果を挙げている。マスクをしない場合に比べ、通常のマスクで鼻に入る花粉はおよそ70%、花粉症用のマスクではおよそ84%減ったという。

英語圏でよく検索される「なぜ日本人は屋外でもマスクをするのか」への答えの中心はここにある。スギやヒノキの花粉が飛ぶ春には、花粉を吸い込みやすい屋外でこそマスクが役に立つ。

2023年3月13日に何が変わったのか

2023年3月13日から、国はマスク着用を一律に求めるのをやめ、個人の判断に委ねた。ただし一部の場面では引き続き着用を勧めている。

2023年2月10日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、屋内では基本的にマスクの着用を推奨するとしてきた扱いを改めると決めた。今後は「行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本」とする。この見直しは3月13日から適用され、学校については4月1日からとされた。さらに5月8日には、新型コロナの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移った。

厚生労働省はその後も、いくつかの場面では着用を勧めている。医療機関を受診する時、高齢者など重症化リスクの高い人が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設を訪ねる時、通勤ラッシュ時など混雑した電車やバスに乗る時だ。症状がある人には外出を控えるよう求め、やむを得ず出かける時はマスクを着けるよう呼びかけている。一方で「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう」配慮を求め、事業者が利用者や従業員に着用を求めることは許容されるとも明記している。

文化を理解するうえで大事なのは、国が示すマスクの理由の多くが、着ける本人ではなく周りの人、特に重症化リスクの高い人を守ることに置かれている点だ。

日本人は今もマスクをしているのか

以前より減ったが、今も多くの人が着けている。ある追跡調査では、公共の場でのマスク着用率は2023年3月に70.7%だった。その後の最低は2025年8月の38.2%で、インフルエンザの季節には再び上がっている。

日本リサーチセンター(NRC)は2023年3月から、20〜69歳を対象としたウェブ調査を毎月続けている。毎日約150人に聞き、1週間分を合算して人口構成比でウエイトをかけ、「この2週間で感染症対策として公共の場でマスクを着用したか」を尋ねる調査だ。2026年6月10日公表の報告(2026年5月調査まで)によると、着用率は2023年3月の70.7%から、2023年4〜6月に6割台、2024年5月までは5割台、2024年6〜11月には4割台へと下がった。インフルエンザと新型コロナが続けて広がった2024〜25年の冬には5割台に戻り、2025年の盛夏に3割台(8月は38.2%)まで下がった。その後、秋冬のインフルエンザ流行期に再び5割台へ上がっている。なお2025年2月に質問文が「コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症」対策に変わったため、前後で完全には比べられない。

年出来事出典
明治初期(1879年の広告)真ちゅう金網の「呼吸器」。主に粉塵よけ日本衛生材料工業連合会、北多摩薬剤師会
1918〜1921年スペインかぜ。患者2,380万人、死亡388,727人(内務省集計)総務省統計図書館、内務省衛生局『流行性感冒』
1922年3月『流行性感冒』刊行。「マスクをかけぬ命知らず!」のポスター所収国立保健医療科学院、国立国会図書館
1923年「壽マスク」が商標登録品第1号に日本衛生材料工業連合会
1934年インフルエンザ流行でマスクが大流行日本衛生材料工業連合会
1950年/1973年日本初のガーゼマスク/不織布プリーツ型の原型日本衛生材料工業連合会
2019年花粉症有病率42.5%(スギ38.8%)環境省(2022)、内閣官房(2023)、松原ほか(2020)
2023年3月13日マスク着用は「個人の判断が基本」に厚生労働省、対策本部決定(2023年2月10日)
2023年5月8日新型コロナが5類に移行厚生労働省
2023年3月→2025年8月公共の場での着用率 70.7%→38.2%(最低)日本リサーチセンター

周りへの配慮なのか、顔を隠したいのか

調査からはその両方が見えてくる。加えて「周りがしているから」という力も強い。パンデミック初期の全国調査では、着用を最もよく説明したのは周囲の規範に従う気持ちだった。

日本人のマスクを一つの国民性で説明したくなるが、調査が示すのはいくつかの理由の組み合わせで、年代によっても違う。

周りに合わせる。 社会心理学者の中谷内一也氏らは2020年3月下旬、全国の1,000人にオンライン調査を行い、マスクを着ける理由として考えられる6つの要因を比べた。最も強く効いていたのは「他の人がマスクをしているのを見ると、自分もすべきだと思う」という規範への同調だった(標準化係数0.44)。着けると不安が和らぐという要因も効いていた(0.16)。一方、マスクで自分の感染リスクがどれだけ下がるかという見込みは、ほとんど影響していなかった。この研究は2020年に学術誌 Frontiers in Psychology に掲載されている。

まず自分を守る。 方針が変わった後に挙げられた一番の理由は、感染予防だった。LINEリサーチが2023年5月9日に15〜69歳の10,450人に行った調査では、今後もマスクを「着用したい」人の約7割が理由に「自分が感染したくないから」を選んだ。これはすべての年代で1位だった。

顔を見られたくない。 同じLINEリサーチでは、着用を続けたい10代の48.8%が「マスクを外すのが恥ずかしい/顔を見られたくないから」を選び、10代の理由の2位になった。この割合は10代女性で6割超、20代女性でも4割超だった。産経リサーチ&データが2022年10月に2,498人に行った調査(回答者は産経iD会員で50代以上が多い)では、屋外でマスクをほとんど外さない人の13.9%が「人前で素顔を見せることにためらいを感じる」と答えた。女性では22.6%、男性では5.2%と差が大きい。着用を続けたい女性の31.0%は、理由に「メイクをしなくてもよい」を挙げている。

周りの目 — そして、その薄れ。 マクロミルが2023年4〜10月に各回1,000人に行った13回の調査では、着用を続けたい理由としての「周囲でマスクを着用している人が多い」が、5類移行直後の5月上旬から急に下がった。逆に、やめたい理由としての「着用していなくても周囲の目が気にならなくなった」「周囲でマスクを着用しない人が増えている」は上がっていった。ロイヤリティ マーケティングの1,000人調査も同じ流れを示している。2023年9月時点で、ほとんど、または場所によってはマスクを着けなくなった人は67%にのぼった。やめた理由の1位は「着用すると息苦しい・暑苦しい」(71%)で、「周りが着用していない」などが3割前後で続いた。マクロミルの調査では、秋になってインフルエンザが流行し始めると、感染予防を理由に着け続けたいという回答が再び増えている。

ここからは編集部の解釈であることを明記しておく。日本のマスクは、公衆衛生と礼儀と身だしなみが重なる場所にある。大正のポスターは乗り合わせた人を守るものとしてマスクを描いた。今の政府の指針も、重症化リスクの高い人を守るものとして描いている。そして日常の作法は「人に迷惑をかけない」ことを重んじる。この点はJ-Timesの日本人の礼儀正しさは「優しさ」じゃない——1400年かけて磨かれた共存のOSや、空気を読むという芸術:なぜ沈黙が日本最強の言語になったのかでも考えてきたテーマだ。ただし、だからといってマスクが義務だとか、誰もが着けているというわけではない。2023年に着けるのをやめた人は多く、上の調査が示すとおり、外すことも今ではごく普通の選択である。

日本のマスク:よくある質問

日本ではマスクは義務なのか? 義務ではない。2023年3月13日から、国はマスク着用を個人の判断に委ねている。医療機関の受診時や混雑した通勤電車などでは引き続き着用を勧めていて、事業者が利用者に着用を求めることも認められている。

なぜ日本人は屋外でもマスクをするのか? 春の主な理由は花粉だ。2019年の全国調査では花粉症の有病率が42.5%だった。冬はインフルエンザや風邪への対策が中心になる。

旅行者も日本でマスクをする必要はあるか? 原則として必要ない。病院や高齢者施設、店舗などで求められたら従えばよい。厚生労働省の勧めに沿うなら、満員電車に乗る時や症状がある時には着けることも考えたい。

日本でマスクが使われ始めたのはいつか? 明治初期から、主に粉塵よけとして売られていた。予防の習慣になったのは1918〜1921年のスペインかぜの流行時で、内務省のポスターが着用を呼びかけた。

日本ではマスクをするのがマナーなのか? 咳や風邪の症状がある時は、周りにうつさないためのマナーと受け取られることが多い。国も、症状のある人がやむを得ず外出する時はマスクをするよう求めている。症状がない時に着けるかどうかは、本人の選択である。

出典・確認日(2026-09-23確認)

J-Times 編集部。記載の事実は2026-09-23時点。

アイキャッチ画像: Japanese Ministry of Home Affairs (Hygiene Bureau), c.1920 / Wikimedia Commons / Public domain (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poster_from_the_Japanese_Ministry_of_Interior_calls_for_public_health_awareness_during_Spanish_Flu,_1920.png). Same poster is scanned by the National Institute of Public Health: https://www.niph.go.jp/toshokan/koten/Statistics/10008882-p.html

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J-Times Editorial

J-Times 編集部 / J-Times Editorial Team